すしざんまいが救いきれなかったソマリア海賊の微妙な転職先

Telegraph

Telegraphより

 一時、世界中の海を恐怖に陥れていたアフリカ・ソマリア沖で出没していた海賊たち。だが、近年、これらソマリア海賊の発生件数が激減している。  以前配信した記事でもお伝えしたように、一部のソマリア海賊たちは「すしざんまい」の支援もと、漁師への転職(または復職)を果たしていた。  もともと、ソマリア沖はキハダマグロの恰好の漁場として、世界的にも有名だ。だが、海賊が出没するようになってからは、その漁場は放置されたままだった。  そこに目をつけたすしざんまいの木村清社長は、ソマリア海賊たちと面会。略奪行為で得たカネではなく、「自分の稼いだカネで家族を養うべきだ」と説得を試みた。  さらに木村社長は、漁師としては素人同然だった彼らにマグロ漁船を与え、漁の技術を教え、彼らに代わってマグロの輸出ルートも確保。「海賊」から足を洗う手伝いをしたという。  しかし、当然ながら、全員が漁師に転職できたわけではない。では、そのほかの海賊たちは、いまなにをしているのだろうか。  そもそもソマリア海賊による海賊行為自体は1990年代からおこなわれていたものの、2008年から被害件数が急増。運航船を襲撃しては人質をとり、身代金を要求するケースが相次いだ。世界銀行の試算によると、ハイジャックでの平均身代金額は306万ドル。2005年から2012年までの被害総額は3億1500万ドルから3億8500万ドルと言われている。  2008年のソマリア海賊のハイジャック事件急増を転機として、事態を重く受け止めた各国は、2009年から海賊対策を実施。  欧州連合による「アトランタ作戦」や北大西洋条約機構(NATO)による「オーシャンシールズ作戦」をはじめ、各国が人員を派遣し、掃討作戦の実施や一般船舶の護衛を開始した。日本でも、2009年から自衛隊を派遣し、船舶の護衛にあたっているという。また、ソマリア沖を運行する船舶側でも危機意識が高まり、武装護衛をつけるケースが増えた。  こうした努力の末、2009年には218件だった海賊発生件数が、2012年には75件へと減少。さらに、2015年の7月30日の時点で発生件数0件にまで激減した(国際商業会議所(ICC)国際海事局(IMB)海賊情報センターの発表より)。数字を見ると、ソマリア海賊による略奪行為が収まったかのように見える。  だが、一方ではいまだ「違法行為」に手を染めるソマリア海賊たちも存在する。  イギリスのテレグラフ紙の報道によれば、かつては運航船を襲っていたソマリア海賊たちのなかには、海外漁船を守る「ボディーガード」に転身している者もいるという。  これが普通の漁船の警護ならばよいのだが、問題は、元・ソマリア海賊たちが警護しているのが「違法な漁船」であることだ。
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なぜ「違法な漁船」の警備を行うのか
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