米大統領選で躍進する「極右」トランプと「極左」サンダースが示す「挑戦者ポジション」の可能性

AFGE on flickr(CC BY 2.0)

 1月27日に配信した「社会主義者」を自称するサンダース候補の猛追で前代未聞の事態となった米大統領選」にてお伝えしたように、「私は社会主義者だ!」が売り文句の民主党・サンダース候補の勢いが止まらない。  ワシントンポスト紙が27日午前(現地時間)に発表した最新世論調査でも、アイオワ州党員集会出席予定者における各候補者の支持率は、バーニー・サンダース=49% ヒラリー・クリントン=45%と、サンダース陣営がリードを保っている。(Bump, Philip “New Iowa poll shows Bernie Sanders leading — with some red flags” The Washington Post 2016年1月27日)  この優勢を保ちアイオワでの勝利を確実にするために、サンダース陣営は若年層の掘り起こしに注力している。もともと、全米規模の支持率では依然クリントン陣営が優位。しかし、24歳以下の民主党支持有権者ではサンダース候補の支持率が68%と、同年齢層の支持率を26%しか獲得できていないクリントン候補を大きく突き放している。(Dann, Carrie “NBC Online Poll: Trump, Clinton Retain Double-Digit National Leads” NBC News 2016年1月12日)  サンダース陣営が若年層の支持を集める理由は、「公立大学の学費無料化」「奨学金ローン対策」「所得格差是正」などの福祉重視路線。さらにはこうした「若年層狙い撃ち」の施策だけではなく、地球温暖化対策、シリア難民問題、そして司法改革など、サンダースが愚直なまでに満腔で主張する「リベラルだ!レフトだ!社会主義だ!」路線が素直に若年層を惹きつけている。(Robertson, Erin “Watch Out Hillary: Bernie Sanders Is Winning the Youth Vote” Teen VOGE 2016年1月12日)  さらには、元来は無所属の上院議員だというサンダースの経歴も若年層を惹きつける要素の一つだろう。大きな政党の支持を受けず、ハンディキャップと成りかねない「社会主義者」という自称を掲げながら上院議員に上り詰めた「ワシントンっぽくない感じ」「挑戦者としての姿勢」が若い有権者に支持されているのだ。

あまり報じられないトランプの「リベラル」な側面

Gage Skidmore on flickr(CC BY-SA 2.0)

 一方の共和党では,もはや日本でもおなじみとなったトランプ候補の支持率が群を抜いている。全米規模の世論調査では共和党支持者でのトランプ支持率は41%と、2位のテッド・クルーズ候補を大きく突き放している。(Agiesta, Jenifer “CNN/ORC Poll: Donald Trump dominates GOP field at 41%” CNN 2016年1月26日)  ただし注目すべきは、「旧来の共和党支持者はトランプをそんなに支持していない」という点だろう。アイオワ州の党員集会は共和党でも開催される。この党員集会に「これまで出席したことはないが今回は出席するつもり」という有権者に限ればトランプ陣営は優位に立つ。しかし、「以前から党員集会に出席している」という有権者=旧来の共和党支持者では、トランプではなくテッド・クルーズ陣営が支持率トップに立っている。(Bump, Philp “The only number that matters for Donald Trump in this new Iowa poll” The Washington Post 2016年1月26日)  実際、トランプは「メキシコ国境に壁を作る!」「イスラム教徒の入国を禁止する!」など排外主義的な言動で耳目を集める一方、経済政策では「累進課税の強化!」「強い政府・大きな政府で何が悪い!」「富裕層への懲罰的課税が必要だ!」「所得格差是正待ったなし!」「社会福祉の拡充を!」と、あたかも民主党候補者かのような主張を繰り返している。いわばトランプ陣営は「共和党内極左」。これでは旧来の共和党支持者から拒否反応を示されるのも当然だろう。
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「極左」サンダースと「極右」トランプの意外な共通項
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