インバウンド需要の鍵! 大気汚染真っ盛りの北京に見る、「中国で売れる」製品の法則

刻一刻と大気汚染状況が変化する北京っ子が好む「マスク」

1月4日の北京は夕方から続いた悪い大気状態が早朝急に改善(スマホアプリより)

 日本での報道を見ていると、北京や中国の都市部は万年大気汚染に襲われているように思うかもしれないが、実際は、天気が変わるように、大気情況も刻々と変化している。汚染が深刻な情況は、長くても2日間ほどで、多くは数時間から半日ほどで嘘みたいに改善することが多い。大気状態のグラフを見てみると急激に悪化した大気汚染は、数時間でピークを迎え、改善するような状態を繰り返している(改善しても日本の環境基準より悪く、天気予報士が絶叫するくらいの数値)。すなわち、24時間大気汚染が深刻というわけではない。常にPM2.5の数値をチェックしながら、同じ日でもマスクをしたり、外したりしている。  さて、その北京で暮らす人々がどのようなマスクを装着しているのか観察してみると、何やら工場で装着するような大型マスクが目立つ。「3M」製のマスクでコンビニエンスストアで、1枚32.9元(約590円)で売られており、ほとんどの人が同じマスクを着けている。欧米メディアで一時「マスクをつけて外出する日本人」が珍しいものとして報じられたことがあるが、その日本でも想像できないようなほど大げさなマスクをしているのだ。

「大きい方が高機能」という中国人気質

 日本製の薄いけどしっかりとPM2.5に対応した高機能マスクのほうが安くて見た目もいいように思うのだが、北京在住のある日本人駐在員は、「日本製のマスクは薄くて小さすぎて効果を疑われているようです。空気清浄機など機械類は日本製が人気のようですが、一般的に中国人は大きなもの=高機能という価値観が根強いので、小型や軽量なものは効果がない粗悪品と思っているそうです」  日本製マスクの優秀さを知るものとしてはいささか不本意だが、逆に考えるとこれは日本企業にとって、ビジネスチャンスなのではないだろうか。マスクの高機能はそのままに中国人好みに巨大に仰々しいものへ軽量化ならぬ、重量化して販売すれば売れるのではなかろうか。  日本人は軽量化するのが好きだし、得意だが、中国人は大きくて重厚なものを好むのだ。例えば、中国では浄水器も同様で、東レの「トレビーノ」でも、小型の蛇口装着タイプは不人気で、円柱の据え置きタイプが売れるという。機能はほぼ同じで、違いは浄水できる水量だけだと説明しても納得しないという。  中国進出企業のみならず、これから春節となり訪日観光客も増えるであろう時期に突入する。このようなメンタリティを踏まえた上でインバウンド戦略を練ってみてはどうだろう? <取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma
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