カルテルの存在がメキシコの経済成長も妨げる可能性も
最近10年間にカルテル組織によって暗殺された政治家は74人に上る。同様にジャーナリストも多く暗殺されている。また、2014年には43人の大学生が失踪したのは記憶にまだ新しい。この事件の解明は未だにされていないがカルテル組織が関与しているいたのは確かで、事件が起きたイグアラ市の市長とその妻そしてカルテルの指示で動いた警察が関係していたされている。
メキシコはラテンアメリアではブラジルに次ぐ2番目の経済力のある国である。しかし米国に隣接しているという関係から強いドル通貨の前に最近4年間でメキシコ通貨ペソは対ドル30%の切下げになった。更に、原油価格の下落から〈2015年の1月から11月の歳入は7241億ペソ(4兆9200億円)で、2014年の同期に比べ37%の減収になっている〉という。しかし投資は好調で特に自動車産業への投資の伸びは著しい。メキシコ経済省によると〈2015年のこの分野における投資額は103億ドル(1兆2360億円)、5700人の雇用増加に繋がった〉という(参照:「
Bolsamania」)。
しかし、犯罪は増加しており、司法改革の急務が要求されている。またカルテル組織の撲滅に向けてペーニャ・ニエト大統領は警察などの治安組織がこれまで自治州で独立した治安組織になっていたのを中央政府が一括して指揮する組織体に変えて、犯罪取り締まりの効率化を目指している。犯罪が増加し、カルテル組織が更に勢力を増大すると、治安の安全が保障されないという理由から外国からの企業投資なども期待出来なくなる可能性があるのだ。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身