イラストの投稿SNS「pixiv」がアイドルプロデュースに勝算を見出した理由

 世界にも例を見ないイラスト投稿特化型SNSとして、2015年にはユーザー数が1500万人、月間PVが38億PVを超えた「pixiv」。「二次元」であるイラストを軸として成長してきた「pixiv」が、ここに来てアイドルのプロデュースを行っている。イラスト投稿SNSサービスの「pixiv」が、なぜアイドルプロデュースを始めたのか? 果たしてどこに勝算を見たのか?ピクシブ株式会社の代表取締役副社長であり、虹のコンキスタドールの総合プロデューサーでもある永田寛哲氏に話を聞いた。 ⇒【前編】はコチラ ――「入り口になり得るコンテンツ制作」という課題の中で出てきたのが「アイドル運営」というのは意外に思います。
永田寛哲氏

永田寛哲氏

永田氏:もちろんpixivらしいコンテンツ……たとえば漫画だったり、アニメだったりも制作しています。ですが、それに限る必要もない。特にリアルへのアプローチを考えて、いろいろ試してみよう!という土壌がピクシブという会社にありました。  さらに、言ってしまえばピクシブという会社自体、アニメとか漫画の制作という立場で考えても専門家でもなんでもない。そういうコンテンツが好きな人々がユーザーとして集まっているから立ち上げやすいという事はありますが、僕ら自身が制作のノウハウを持っているわけではない。  そう考えたときに、実はアイドルも一緒で、僕らはアイドル運営としての経験やノウハウがあるわけじゃないから、いろいろな方の力をお借りしなければ作れない。そして、たまたま僕がアイドルの運営やクリエイティブの制作に明るい人脈を多く持っていました。それならば、と考えたわけです。 ――でもメンバーを集めるのは難しかったのでは? 永田氏:これはひとつの仮説というか仮定みたいなものだったんですけど、pixivのアクティブユーザーって女子中高生が大半なんですよ。で、今ってオタクとアイドル的な文化っていうのが一昔前よりもぐっと近づいている。アイドルに漠然と憧れを抱いているオタクの女の子、だけど、アイドルのオーディションを自分から受けるのは少し怖い、みたいな。そういった女の子たちが一定数いるだろうという読みがあったんです。  結果、虹コンには元々pixivユーザーだったメンバーがたくさん集まってきました。元々アイドルが好きでアイドルを目指していたという王道のメンバーもいますが、この背景は虹コンというグループの大きな特長です。 ――pixivが運営しているアイドルだからこその強みのようなものはありますか? 永田氏:pixivユーザーの大半は直接的にアイドルに興味があるわけではないでしょうし、逆にアイドルとして興味を持ってくれている人たちにとっては、運営がpixivだってことはあまり関係ないでしょうし、正直なところ現状そこで大きなシナジーを発揮しているわけではないですね。  ただ最終的には、もっと規模が大きくなったときに効果が現れてくるんじゃないかな、と考えています。最終的にはアニメ展開など考えてるので、そこまで行ったときに効力が何か化学反応を起こしてくれるのではないかなと。 ――永田さんは元々マンガやアイドルがお好きだと伺っていますが、現在働くにあたって、その辺りの影響のようなものはありますか? 永田氏:そもそも僕自身がコミケに通っていた一参加者で、そこの目線からpixivのサービスを構成していった部分があって、やっぱりそれは自分が好きだからこそ分かる部分がありましたね。  ただ、好きだという部分だけが先走ってしまうと、とにかく最高のものを作ろう!みたいな視野狭窄に陥りがちで、採算を度外視して職人系に走ってしまうということは往々にしてある。そこを客観視して、ビジネス的な観点でバランスをとれる人って、案外少ないんです。  僕は昔から、むしろそこにこそ興味があって。自分が好きである一方で、「なんで自分はこの作品が好きなんだろう」「なんで○○は世間に受け入れられたのに、××は流行らなかったんだろう」っていうことを、ファン目線から一歩引いて考えるのが好きだった。そういうクセはビジネスをするにあたって向いていたのではないかなと思っています。  三次元のアイドルビジネスが飽和状態になりつつある一方で、『ラブライブ』や『アイマス』など二次元のアイドルはいまだ高い人気を誇っている。両者の魅力を熟知したpixivが手掛けるアイドルは、この先いかなる展開を見せるのか。注目していきたい。 <取材・文/HBO取材班>