「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

阪急は「ケーキの出前」を拡大――カギは「医療用バッグ」

 関西の雄「阪急百貨店」(阪急阪神百貨店、大阪市北区)が開始したのは、百貨店業界初だという「ケーキの出前」だ。  阪急百貨店の冷蔵ケーキ宅配サービスはコロナ禍前の2019年10月より「HANKYU CAKE DIARY」として大阪市周辺で開始されたもので、阪急阪神百貨店のネットショップから様々なケーキを選んで注文すれば自宅に新鮮なケーキが届くという、いわば「ケーキの出前」サービス。「出前サービス」は今や戦国時代の様相を呈しているが、阪急のサービスは医療用の冷蔵輸送バックを元に独自に開発した特製バッグを用いて配達することが特徴で、デリケートなケーキでもかたちを壊すことなく、鮮度を保ったまま届けられるようになったという。
特製の宅配バッグ

阪急阪神百貨店による記者会見で披露された特製の宅配バッグ。

実店舗に足が運びづらい状況ということもあり、コロナ禍でも阪急のケーキ宅配サービスは好調で、2020 年度下期の受注数は、前年同期比約 4 倍(冷凍ケーキ宅配サービス含む)に急成長。2021年4月19日からは「TOKYO CAKE DIARY by Hankyu(東京ケーキダイアリーby阪急)」と題して首都圏でも開始されることとなった。サービスには「日本橋千疋屋総本店」「新宿 高野」「パティスリー カメリア銀座」「ピエール・エルメ・パリ」など都内の有名店も多数参加。現時点では港区、渋谷区、新宿区など都心地域のみでの展開であるが、5月16日までは通常990円の配送料が半額となるキャンペーンも実施されている。ピザを注文する感覚で高級ケーキを頼んでみてはどうだろうか。
阪急百貨店大井町駅前店

都内にある阪急百貨店(東京都品川区・大井町駅前)。

高島屋は一等地の「ライバル跡」に「高級品特化」で新規出店

 実店舗の強化を図るべく新規出店に乗り出す百貨店もある。  その1つが「高島屋」(大阪市中央区)。しかも出店するのはコロナ禍で閉店したライバル「伊勢丹」の店舗跡というから驚きだ。
大名古屋ビルヂング

高島屋が出店を決めたJR名古屋駅前「大名古屋ビルヂング」(左、名古屋市中村区)。ここには伊勢丹が出店していたが、コロナ禍のなか閉店していた。

 高島屋が出店するのは、JR名古屋駅から徒歩1分の一等地「大名古屋ビルヂング」(名古屋市中村区)にあった伊勢丹の中型店「イセタンハウス」(ISETAN HAUS)跡の大部分。同店は2016年3月に名古屋市で初の伊勢丹として開業。売場は地階から2階までで、首都圏の店舗と比較するとかなり小規模であったが、伊勢丹ならではの品揃えをコンパクトにまとめた内容となっており、おもに名古屋駅周辺で勤務するビジネスマンに親しまれた。しかし、コロナ禍のなか、2020年8月に僅か4年の歴史に幕を下ろすこととなった。  高島屋は、この伊勢丹跡の大部分を日本最大級の高級時計ゾーン「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」として2021年夏に開業させる計画。同店の向かいには「JR名古屋高島屋」が出店しているため、事実上の「増床」となる。 「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」は同店の高級時計売場を拡大するかたちで向かいの伊勢丹跡に移設。売場面積は約1,200㎡で、高島屋によると、高級時計専門売場としては日本最大になるという。
ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン

「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」のイメージ

 コロナ禍のなかであっても、都心の百貨店では高級品の売れ行きは比較的好調だという。しかしこの時期に「高級品専門業態」で「増床」にまで踏み切るのは異例のことだ。  JR名古屋高島屋が出店している名古屋駅前には「名鉄百貨店」、「近鉄百貨店」(近鉄百貨店は若者をターゲットとした業態)も店舗を構えるほか、電車で僅か5分の距離である市中心部・栄には「松坂屋」と「三越」の旗艦店が出店している。  ライバルがひしめく名古屋だけに、高島屋が採った「攻めの姿勢」の成否には、他の大手百貨店も注目していることであろう。
ジェイアール名古屋高島屋

大名古屋ビルヂング前から見た「ジェイアール名古屋高島屋」(名古屋市中村区)。同店は名古屋の百貨店としては最後発ながら市内の商業施設で1位の売り上げを誇る。向かいの建物に新規出店することで圧倒的地位を固めたい思惑もあろう。

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縮小続く西武百貨店、「小さなデパ地下」で起死回生めざす
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