公明党が都構想賛成に回ったのは、維新の“恫喝的圧力”の産物
住民投票否決後に記者会見に臨んだ、吉村洋文・大阪府知事(左・日本維新の会副代表)と松井一郎・大阪市長(右・日本維新の会代表)
なぜ維新は都構想否決の記憶が鮮明なうちに、住民投票結果を覆すに等しい条例化を急いだのか。維新ウォッチャーは
「公明党への“脅し”が効く総選挙前に一元化条例を可決しておかないと、大阪市の潤沢な財源を府が吸い上げる機会がなくなってしまうと考えたためでしょう」と見ていた。
もともとは都構想に反対だった公明党が賛成に変わったのは、維新が「公明党衆院議員の小選挙区に対抗馬を立てる」という“恫喝的圧力”の産物といえる。だからこそ、東京五輪前の解散も取り沙汰される中、2月議会での可決が必須と考えたというわけだ。維新ウォッチャーはこう続ける。
「『常勝関西』と言われるほど公明党が強い関西エリアで、急速に勢力拡大した維新の意向を無視しにくくなったのです。公明党は議席死守のために維新の“脅し”に屈する形で妥協を繰り返し、反対から賛成へと方針変更したものの、支持者(創価学会員)の公明党離れを招いた。
前回の住民投票でも山口那津男代表が現地入りして都構想賛成を呼び掛けたのに、公明票を賛成でまとめきれずに都構想否決の大きな要因にもなったのはこのためです。今回も同じような圧力を維新が公明党にかけたのは確実でしょう」
筆者の質問に答える松井市長
このことを可決直後の囲み取材で松井氏に聞いてみた。
--住民投票否決後、公明党が今回の条例に賛成する過程において「対抗馬を立てるぞ」といった主旨のことを言ったのか。
松井市長(維新代表):ありません。皆さん(報道関係者)がそう言っているだけ。僕はやる時は正々堂々と、知事を辞めて自公民共を相手に戦っている。
--公明党はよく今回の条例案に賛成に回ったと不思議に思ったが。
松井市長:公明党は都構想に賛成した。そこから比べたら一元化条例は、公明党が超えるハードルは全然低いではないか。
公明党への“脅し”を否定した松井氏だが、維新が条例化を急いだ背景に大阪府の財源不足があると見られている。「カジノ・IRや万博など大型事業推進には潤沢な市の財源を府が“カツアゲ”することが不可欠」という見方が有力なのだ。
根拠の一つが、コロナ禍でのカジノ業者の苦境。オリックスと組んで大阪進出を表明している米国カジノ業者「MGM」は経営難に陥り、府市との面談もできない足踏み状態が続く。計画では予定地の「夢洲」(大阪湾の人工島)への地下鉄建設費200億円をカジノ業者が出す前提がコロナ禍で揺らぎ、府市が肩代り事態も十分にありうる。
大阪万博も想定外の支出増を招いている。3分の1の費用負担をする民間企業がコロナ禍で寄付金激減が必至で、全体の費用も会場設計費アップなどで約600億円を増額した。これを政府と府市と民間で三等分する。民間の追加負担分を府市が一部補填する可能性は十分にあるが、府は財政余力が乏しいため、大半を市が背負う羽目になるのは確実だ。
「だから維新の目玉政策であるカジノ(IR)や万博を予定通り進めるためには、潤沢な大阪市の財源を“カツアゲ”することが不可欠と見られているのです」(維新ウォッチャー)