コロナ対策で「物言う知事」として存在感を示す丸山島根県知事と、虚飾ぶりが露呈した小池都知事

厚労省も竹下氏も、丸山知事の問題提起を軽く見ている!?

記者会見に向かう丸山達也・島根県知事

記者会見に向かう丸山達也・島根県知事

 実際に丸山知事の要請活動は、全国のキー局を含めて大きく報道された結果、島根県の政策発信に成功。政府・自民党の動きの鈍さを浮彫りにする効果もあった。要請活動後の会見で筆者の質問に対して、次のように丸山知事は答えたのだ。 ――知事が2月3日に厚労省に「積極的疫学調査縮小の調査をしてほしい」と要望書を出し、無回答状態だったので五輪反対にまで踏み込んだが、今日の(山本博司・厚労)副大臣との面談で調査が進んだとかの具体的回答はあったのか。 丸山知事:「今日、回答できることはない」という答えでした。もしかしたら、(厚労省は積極的疫学調査縮小の調査について)「回答する必要がない」と思われているかも知れませんね(笑)。  無回答状態が続いていることを確認した筆者は、「丸山知事に注意する」と発言した竹下亘・元総務会長についても聞いてみた。注意すべき相手は、積極的疫学調査の調査を進めない厚労省ではないかと思ったためだが、丸山知事はこう答えた。 「『注意』というのは物の言い方ですが、私自身も政治の世界に入って知事になって2年、政治の世界の流儀でいうと、今回のやり方がかなり乱暴なやり方なのは間違いないと思う。(「注意すべき相手は厚労省ではないか?」と聞くと)竹下先生とはそういう議論をしていない」  丸山知事の五輪開催に対する問題提起を、厚労省も竹下氏も重く受け止めているとは言い難い。  今回の島根県の要望書には「第3波を踏まえたコロナ対策の強化」とある。これは、第3波の感染拡大では保健所がパンク状態(マンパワー不足)となって感染経路を追跡する「積極的疫学調査」縮小に陥ったが、第4波を抑え込むためには「コロナ対策の強化(保健所職員の増員など)」が不可欠だと丸山知事は訴えているのだ。  そのためには第3波の検証、つまり「積極的疫学調査がどこまで縮小されたのかの全国調査(現状把握)」をしたうえで、ワクチン接種や五輪関連業務が加わる中での「コロナ対策強化プラン」を作成、準備を進めることが五輪開催の必要条件となる。しかし現時点では、具体的内容が示されていないことから丸山知事は五輪反対の立場を取っている。

丸山知事「(都の対策に対する)メディアの社会的チェックは大事」

千代田区長選「密集」街宣を行った小池知事

千代田区長選で「密集」街宣を行った小池知事

 丸山知事は、筆者の質問に対して次のように締めくくった。 「次の感染拡大局面(第4波)に対してどこまで耐えられるのかを確認しておかないといけないのではないか。『(コロナ)対応能力』というのはそういうことだ」  会見終了後、「小池知事の千代田区長選『密集』街宣の記事を書いたものです」と自己紹介しながら、筆者の著書『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』を手渡した。すると、「(都に対する)社会的チェックが効いていない」(2月10日の会見)と語った丸山知事は、「メディアは大事です」と言ってエレベーターに乗り込んだ。  丸山知事の問題提起後、小池知事は積極的疫学調査を回復(縮小解除)するように通知を出し、保健所職員の増員方針も発表した。しかし、千代田区長選「密集」街宣を否定するなど言葉上だけでごまかす傾向のある小池知事については、コロナ対応強化発言と実態が伴っているのかどうか、メディアが厳しくチェックする必要があるのだ。 「物言う知事」として存在感を一気に示し始めた丸山知事と、虚飾ぶりが暴かれ始めた小池知事――対照的な2人の言動から目が離せない。 <文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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仮面 虚飾の女帝・小池百合子

選挙や五輪を優先して、コロナ感染爆発を招いた小池百合子東京都知事。
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