従来の答弁と同様、当日の約20分間の質疑においても萩生田文科大臣や文化庁は「申請者の方が制度を勘違いしていたので取り下げてもらった」「文化芸術関係者だから手続きに不慣れだった」と申請者側に責任転嫁したり、「事務局の人数が少なかった」「文化庁は大規模な補助事業は初めての経験だった」と文化庁の責任逃れに終始していた。が、あまりにも理不尽な理由で不交付・取り下げに至った数々の実例を具体的に示され、質疑の終盤で萩生田文科大臣は改善に向けて、以下3つの答弁を初めて行う。
①事務局体制に不備があった
②きちんと手続きをしたのに不交付・取り下げになった申請者は遡及してでも救済する
③ARTS for the future!の支援対象にライブハウスも含める
まず、①と②の答弁が引き出された質疑を紹介する。(質疑映像は下記の動画4分44秒~)
吉良よし子:『交付されても外されてしまっているような人まで出てきているっていうのはね、本当に救い切らなきゃいけないと思うんですよ。遅延が仇になっては困るわけで、大臣いかがですか。ちゃんと丁寧に救って頂きたい。』
萩生田光一文科大臣:『先ほども答弁しましたけど、全体では約8万件423億円を交付しました。しかし、それに漏れてしまった方たちがいらっしゃるのも事実であります。先ほど来、先生のご説明聞いている限りでは、事務局体制にも不備があったんだろうというふうに認めざるを得ないと思います。(中略)そこで埋もれてしまった方たちがいらっしゃったとすればですね、これは本当に申し訳ないなと思います。きちんとした手続きを踏んでるのに仮に不採択になっているとすればですね、それはもう遡及してでも救済しなきゃいけないと思うんで、具体例があったらちょっとまた教えていただきたいんですけれど。』
ようやく事務局体制に問題があったことを認め、「訴求して救済」についても明言している。申請者に責任転嫁ばかりしていた従来答弁と比較して、大きな前進と言える。
また、文化芸術活動の継続支援事業ではライブハウスは対象外だったことを踏まえて、今後予定されている第3次補正予算の支援事業であるARTS for the future!ではライブハウスが対象に含まれるのかを吉良よし子議員は確認し、③の答弁が引き出される。(質疑映像は下記の動画6分7秒~)
吉良よし子:『予算委員会ではライブハウスのことについても質問しました。で、大臣はですね「ライブハウスがなくなること全然望んでいません」と。「ここはしっかり支援していきたい。責任を持って対応していきたい」と答弁されたわけですけれども具体的にどのように支援するんでしょう。このARTS for the futureの対象にも含めるということでよろしいですか。(中略)ライブハウスも対象になるということ?イエスかノーで。』
萩生田光一文科大臣:『入ります。』
吉良よし子:『(対象に)なるということでした。先ほどの継続支援事業ではライブハウスは対象外だと。まず経産省だって制度の説明に書かれていたわけで、大臣「最初に問い合わせて欲しかった」っておっしゃってましたけど、問い合わせできなかったんですよね。だからやっぱり最初から除外するなんてことなく、ライブハウスなども含めた小規模の施設もちゃんと支援の対象にも含めて、守り切っていただきたいということを申し上げて質問を終わります。』
ARTS for the future!ではライブハウスが対象に入ることが明言され、対象外だった文化芸術活動の継続支援事業と比較して、これも前進したと言える。
この3月22日の質疑は、あまりにも理不尽で救いようのない不交付・取り下げの実例の数々が明らかにされたことで、萩生田大臣から改善に向けた3つの答弁を初めて引き出しており、現状の改善に向けて大きな意味を持つと考えられる。
<文/犬飼淳>