入管が押しつける「偽名」。強制送還もされず、「仮放免」と「収容」の繰り返しに苦しむスリランカ人

2021年3月3日に開かれた控訴審後のダヌカさん

2021年3月3日に開かれた控訴審後のダヌカさん。体重は仮放免から1年2か月を経て、ようやく60Kg台にまで戻った

 スリランカ大使館が「間違いなく本人である」と証明しているのに、「他人である」として、日本の入管収容施設に長期収容されてきたスリランカ人・ダヌカさんが起こした「ダヌカはダヌカである」ことを認定する裁判が3月3日、裁判長の突然の「結審宣言」で終わった。これは、筋書きが初めから決まっていたのだろうか?  

スリランカ大使館は、ダヌカさん本人だと認めている

 スリランカ人男性のダヌカさん(38歳)は、入管から「ダヌカなる人間はダヌカではない。チャミンダである」として長期収容を強いられてきた。  ただしその背景の一つとして、ダヌカさんが10代のときの1998年、ブローカーから「未成年者では日本のビザを取れない」と吹聴され、「チャミンダ」名義の偽パスポートで来日した過去があるのは事実だ。10年後、ダヌカさんは不法滞在が発覚して帰国する。  帰国後に貿易会社を設立したダヌカさんは、2年後の2010年、今度は正式なダヌカ名義のパスポートで商談のために来日した。ところが滞在中に、入管が「ダヌカ名義の偽パスポートでチャミンダが入国した」と判断して逮捕。ダヌカさんは出入国管理法違反により横浜刑務所で2年間服役した。  風向きが変わったのは、その収監中にダヌカさんの要請に基づいて調査を行った在日スリランカ大使館が「ダヌカは間違いなくスリランカ国民のダヌカである」との証明書を発行したことだ。
2012年8月16日にスリランカ大使館が発行した「ダヌカはダヌカである」とした証明書

2012年8月16日にスリランカ大使館が発行した「ダヌカはダヌカである」とした証明書

 これで2013年3月の出所後にダヌカさんは晴れて帰国できるはずだった。ところが入管は、出所と同時にやはり「別人である」として、ダヌカさんを入管収容施設に収容した。ダヌカさんは、8か月後の11月に「仮放免」(収容を一時的に解く措置)される。

本名のパスポートでは出国できない!?

2020年に在日スリランカ大使館が新たに発行したダヌカ名義のパスポート

2020年に在日スリランカ大使館が新たに発行したダヌカ名義のパスポート

 収容も仮放免も「退去強制令書(帰国命令書)を出された者が、帰国の準備が整うまで」の暫定措置である。ところが困ったのは、ダヌカさんが帰国を望んだとしても、ダヌカ名義のパスポートでは出国させてもらえないし、スリランカ大使館が他者であるチャミンダ名義のパスポートを発行するはずもないので、入管による強制送還すらできないことだ。  仮放免中、ダヌカさんはその後の心の支えとなる日本人婚約者のAさんと出会う。だが、1~2か月ごとに行う仮放免の更新で、2017年7月にダヌカさんは理由も告げられずに再収容された。以後、2年半という長期収容生活を送ることになる。  詳細は割愛するが、「一生出られないのか」との不安からダヌカさんはうつ病と拒食症を発症し、水すら吐くようになる。70Kgあった体重が46Kgに落ち、Aさんも支援者も筆者も「このままでは死ぬ」と心配していた。  2019年末、ダヌカさんはまさに死の寸前になってようやく仮放免された。その日は、歩くこともできなくなったので車いすで姿を現した。
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大使館が本人認定してるのに裁判所は無視
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ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄"

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