※写真はイメージです。 photo by mituki / PIXTA(ピクスタ)
この春、4月からパチンコ遊技機のテレビCMの自粛が解禁される。
地方局ではパチンコ店のCMが流されていたり、遊技機メーカーでも企業のイメージ向上を図るCMは度々流されたりしてきたが、遊技機のCMは、実は10年の間、一度もテレビで流されていない。
10年間のブランクを経て解禁される遊技機のテレビCMは、コロナ禍に喘ぐパチンコ業界にとって業況浮上の切掛けになるのか。業界関係者の多くは期待感を露わにするが、一方で不安を隠さない関係者もいる。
パチンコ遊技機CM解禁の業界事情と、関わる人たちの交錯する想いをレポートする。
パチンコ遊技機メーカーで構成される日本遊技機工業組合(日工組)が、パチンコ遊技機のテレビCM自粛を終了することを決定した。決定自体は昨年の12月末であったが、満を持して4月1日よりCMが解禁される。
メーカーが遊技機のCMを自粛していた背景には、2011年3月の東日本大震災がある。
多くの犠牲者を出した未曾有の大災害の状況が連日報道されるなか、テレビのバラエティー番組はもちろん、娯楽に関わる多くのコンテンツが自粛を選択した。パチンコ業界もそれに漏れることは無かった。まして関東全域が極度の電力不足に陥り、輪番停電も実施されるなか、石原慎太郎東京都知事(当時)の発言も相まって、パチンコ店は電力を無駄に消費しているという社会的なバッシングを強く受けた。遊技機関連のCMはあれから10年、テレビで流れる事は無かった。
その後、政府のIR(≒カジノ)設置に向けた議論が公に報道されるに連れ、ギャンブル依存症に対する世間の関心も高まり、この時もやはりパチンコ業界は社会的なバッシングを受けざるを得なかった。東日本大震災後の自粛ムードが明けても、遊技機メーカーがCM解禁に踏み出せなかったのにはこの辺りの事情も絡んでくるし、業界関係者の中にも、テレビCMの自粛は、ギャンブル等依存症対策の一環であると思い違いしている人が少なからずいる。
東日本大震災から10年の区切りを迎え、解禁されるテレビCM。
この10年にパチンコの遊技人口は大きく減少した。店舗数も最盛期の半分にまで減少した。震災時には電力でバッシングされ、ギャンブル依存症の元凶と言われ、コロナ禍でも標的にされたパチンコ業界にとって、今回のテレビCM解禁はどのような意味を持つのか。