信用できない勧誘とわかった時点で「切ればいい」と書いたが、文字通りスパッと切り捨てるのが理想だ。
関わりを立つ理由を相手に説明する必要もない。いや、しない方がいい。
カルト、特に宗教の場合、信者の多くは真面目で優しくていい人たちだ。団体によって教義や論法は違うにしても、正体を隠して勧誘するのも相手を救済に導くためだから相手のためになることなのだという類いの宗教的な情熱や使命感で行動しているケースが大半だと言っていいくらいだ。
「相手を騙して入信させてやったぜ、ざまあ!」という悪意や意地悪さは、そこにはない。何か悩みや困り事があれば親身に聞いてくれる。それは演技ではなく、本心だったりする。
そういう相手への好意や敬意、場合によっては憧れさえ抱くほど仲良くなった後だと、「実は宗教でした」とわかっても強く反発しない人が多くなる。しかし
実際に彼らがやっていることはウソと偽装と隠蔽。「偽装勧誘」だ。
いい人かもしれないが、やっていることは悪いことだ。でも本人は悪いと思っていない。そんな相手に、勧誘を断り連絡を断つ理由を説明したところで納得はしてくれない。それどころか、勧誘を断ろうとする相手の主張に応じて、なだめたり誤魔化したりさらなるウソをついたりして、引き戻そうとする。
先程「数撃ちゃ当たる」と書いた。彼らは何十人、下手したら何百人にも声をかけて勧誘してきている。当然、勧誘を拒絶する相手とのやり取りも数え切れないほど重ねてきている百戦錬磨の勧誘戦士だ。そんな人にわかってもらおうとして会話を重ねても、あるいは
論破してやろうと理屈を並べても、口で勝てるわけがない。
むしろ言いくるめられ深みにハマるリスクの方が高い。実際、私の大学生時代に大学内で自己啓発セミナーが流行していたのだが、「友人を巻き込んだセミナー会社のやつを論破してくる」とばかりに出かけていった友人が、見事に自己啓発セミナーにハマって周囲を勧誘しまくっていた。
だから、
勧誘を断る際に説明や議論はすべきではない。容赦なく切り捨てよう。
ただし、もともと仲が良かった友人が実は信者で(あるいは信者になってしまって)、勧誘してくるようになった場合は、すっぱり切り捨てるのは難しいかもしれない。切り捨てたところで、授業等で顔を合わせることもあるだろう。そんなときは、宗教の話や勧誘に関連する話だけ拒んで、当人との友人関係はむしろ今まで通り変わらないことを強調しながら関わるという方法もある。
本人が聞き入れてくれるかどうかにもよるので、力加減は臨機応変にとしか言いようがない。しかし、周囲の友人などがこういう対応をしてくれると、ゆくゆくはカルトにハマっている本人のためにもなったりする面もある。
勧誘しない限り友人として付き合ってくれる。カルト信者にとって、そんな友人がいれば、カルト以外の価値観に触れる貴重な機会になるし、いつかカルトでの活動に疑問を抱いた時、「外の世界」を必要以上に怖がったり不安がったりしなくて済む重要な要素になりうる。
カルトをやめるように無理に説得しなくてもいい。「本人のため」と思って説得しようとしても、無理をすると関係が悪化して友人関係そのものが壊れてしまう場合もある。そうなったら長期的な関わりの中で緩やかにカルトを離れる(一般論としては、この方が当人にとっての精神的ダメージが比較的少ない)という道も断たれかねない。
緊急の実害がない限り、ほどよくほったらかしてほどよく付き合うというのも、お互い気が楽だったりもする。
逆に、当人が周囲を勧誘しまくって迷惑をかけまくっているとか孤立しているとか、多額の献金のために借金をしようとしているとか、進学や就職を放棄して人生をカルトに捧げようとしているというような、何かしらの実害がある場合。これはもう「友人として」どうこうできる範囲を超えている。大学の学生課やカウンセラーなどに相談し、連携はしつつも直接の対応は専門家に任せたほうがいい。大学関係者なら親との連携もとりやすい(親も信者である場合は難しかったりもするが)。大学以外に、カルト問題に取り組んでいるカウンセラーなどに直接コンタクトを取り相談する方法もある。