「怪しい勧誘に注意」だけじゃ足りない! 大学・高校でカルト勧誘を断る方法

素性不明の団体に個人情報を与えない

ビラを手渡さずに見せるだけの政治セクト系団体の勧誘

ビラを手渡さずに見せるだけの政治セクト系団体の勧誘(2016年、一橋大学で)

 コロナ禍によってだいぶ事情は変わってしまったが、新歓期に一般のサークル勧誘に紛れてビラまきや声かけをしてくるカルト集団に限って言えば、初期段階で「怪しい」ポイントがあるケースもないではない。  その1つが「チラシを手渡してこない(あっても基本見せるだけ)」という点。あるいは、「チラシにサークルの連絡先や代表者名など所在を明らかにする情報が一切ない」。それでいて、別の場所に連れて行って話をしようとしたり、LINEのIDや携帯電話番号、メールアドレスといった個人情報を聞き出そうとしたりする。「アンケート」の体裁でこれをしようとする団体もある。  彼らがビラを配らなかったり、サークルの連絡先を記載していなかったりする理由は、簡単だ。大学側に捕捉されないようにするためだ。大学によっては、カルト集団が政治セクト系のサークルなどから目の敵にされているケースもあり、それに対する対策の意味も兼ねている場合がある。  優しそうな「先輩」(に見えても実際は他大学の学生だったり、学生ですらない場合もあるのだが)から「LINE交換しない?」と笑顔で言われると、露骨に「い・や・だ!」とは言いにくいかもしれない。そんなときは「チラシをください。興味があったらこちらから連絡します」。興味があるサークルなら、実際に後でチラシの情報を元に説明会等に行けばいい。チラシをくれないなら「じゃあ、さようなら」だ。  自らの情報を相手に与えようとしない団体に対して、自分の情報を与える必要なんかない。チラシをくれない理由を尋ねたり、その是非を議論したりする必要もない。会話をぶった切ってその場を離れることが重要だ。

カルトの団体名を暗記しても勧誘は防げない

 何人かの大学関係者に話を聞くと、全国の大学で共通して意識されている宗教団体は概ね共通している。 (1)統一教会  現・世界平和統一家庭連合。故・文鮮明(ムン・ソンミョン)が韓国で設立した宗教団体で、現在はその妻・韓鶴子(ハン・ハクジャ)が総裁。霊感商法や合同結婚式などが社会問題化している、日本を代表するカルト団体だ。被害者による訴訟がいくつも起こされている。分派としてサンクチュアリ協会がある。 路上でのアンケートやボランティアサークルなど様々な形態を装い、当初は団体名や宗教勧誘であることを告げずに勧誘した上で、時間をかけて信者にしていく。大学の中では「原理研究会」あるいはその頭文字である「CARP」を名乗ることもある。 (2)キリスト教福音宣教会  前述の摂理。教祖・鄭明析(チョン・ミョンソク)による性的被害が取り沙汰され、教祖は性的暴行の罪で韓国で服役したがすでに出所し、教団に復帰。日本でも活動を続けており、教祖による性的被害については冤罪を主張し反省もしていない。キリスト教を名乗っているが、独自色が強い「キリスト教系新興宗教」とも呼ぶべきもの。 スポーツサークルや文化系サークル、あるいは就活関連のセミナーなど、無尽蔵に多彩な種類のサークルを装って勧誘する。親密になってから、「聖書の勉強」などを持ち出し、教義を刷り込んでから宗教団体であることを明かし入信させる。SNSを通じての勧誘に特に力を入れており、コロナ拡大以降は特にSNSを重視している。 (3)浄土真宗親鸞会  浄土真宗を名乗って入るものの、一般的に知られている浄土真宗の各宗派とは無関係の単特の新興宗教。富山県に本部を置き、全国から信者が集まる。少なくとも学生については高額な献金の被害等を耳にするケースは多くないが、本部に教祖・高森顕徹の法話を聞きに行くための交通費や勧誘活動のための携帯電話料金など、活動にかかる出費がかなりかさむという話は聞く。  「生きる意味を考えるサークル」「古典を学ぶサークル」「大学生活に関する情報発信をするサークル」等のサークルを装う勧誘で有名だったが、大学によるカルト対策の普及によってSNS勧誘や、学外での「仏教講座」「アニメ上映会」「異業種交流会」といったイベントを通じての勧誘にシフトしている。これらの主催者や講師となっている親鸞会信者は、親鸞会を名乗らず「仏教講師」とか「浄土真宗」といった肩書しか名乗っていない場合もある。 (4)顕正会  日蓮正宗から分派した、いわば創価学会の兄弟分のような宗教団体。勧誘対象を車で連れ回しながら勧誘したり、入信を拒んだり脱会しようとした人を監禁したり暴行したりといった調子でしばしば逮捕者が出ている。 よく聞くのは、路上で新聞を渡され声をかけられる勧誘のほか、「大学入学後に高校時代の友人から久しぶりに電話で呼び出されて、出向いてみたら勧誘された」というパターン。宗教勧誘であることを告げずに騙し討ち的に呼び出したりするが、勧誘が始まった段階では「顕正会」であることを隠さない場合が多い(団体名を告げないまま、路上で勧誘した相手を強打施設に連れ込んで入信届を書かせるというケースもある)。 (5)ヨハン東京キリスト教会  日本で設立された韓国系のキリスト教会。もともと「ヨハン早稲田キリスト教会」の名前で知られている。東京以外では「ヨハン○○(地名)キリスト教会」を名乗る支部を擁しているが、現在は各地の教会名は「ヨハン」の文字を含まないものが多くなっている。大学や周辺でゴスペル・コンサート等を自称して勧誘する他、過去のケースでは「留学生との交流する団体」「就活セミナー」などと称して学生や若者を教会に連れて行って勧誘するという手法も確認されている。
2人がかりで1人を勧誘する顕正会信者たち(池袋の喫茶店で)

2人がかりで1人を勧誘する顕正会信者たち(池袋の喫茶店で)

 この他に、大学や地域によってはオウム真理教(アレフ)がヨガ・サークルを装って勧誘しているケースもある。また全国の大学祭では、幸福の科学が教団名を伏せて「心のエステ」等の名で心理テストのような出展を行い、宗教団体であることを明かさないまま個人情報を収集したり、教祖の言葉を「心理テストの結果」を受けてのメッセージであるかのように装って伝えて教義を刷り込もうとしたりする。  幸福の科学の場合は、出展サークル名で「○○大ハッピー・サイエンス」を名乗るケースが多く(全く違う名称を用いる場合もあるが)、上記の他団体に比べると偽装は徹底していない。大学祭以外、友人経由での勧誘や路上での書籍・チラシ配布といった形での勧誘では、基本的に団体名や目的を偽ることはない。  大学生だけではなく高校生への勧誘もある。学校内で友人から勧誘されるケースばかりではない。繁華街の路上で、駅で、書店で、喫茶店で、様々な場面で声をかけてくる。勧誘する側は、単に年齢を見定めるだけではない。たとえば大学の近くにある店で家具を選んでいたりすれば「新入生かな」と当たりをつけるし、書店や喫茶店で参考書を見ていれば「受験準備中の高校生かな」と当たりをつけて声をかける。道を尋ねるなどの体を装って声をかけることもある。  そして、ここで残念なお知らせだ。具体的な教団名を列挙しておいて申し訳ないが、これらを丸暗記してもカルト勧誘は防げない。  上記の説明でおわかりのとおり、カルトは程度や手法の違いこそあれ、団体名すらまともに名乗らない。大学祭以外の場面での幸福の科学は例外的な存在だ。  団体名や一般にも知られている被害を明らかにして声をかけてくるカルトは存在しない。この記事にある団体や手口と同じだとわかるのは、勧誘に巻き込まれた後のことだ。
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カルト関連のSNSアカウントを見抜くのは無理
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