選択的夫婦別姓を希求する人々(私もその一人だが)からすれば、あの丸川大臣の答弁拒否や笑顔は許し難いものに違いあるまい。ああした形で政府側の選択的夫婦別姓制度に対する煮え切らなさを炙り出して見せたのは、福島議員の戦術勝ちだと言えよう。
しかし、一方で
「法改正し、選択的夫婦別姓を制度化する」という議論の戦略面では、丸川大臣が圧倒的な勝利を収めてしまっていることを忘れてはいけない。
あの答弁拒否とあの不敵な笑いが報じられたあと、メディアは「
選択的夫婦別姓に反対しながら、自らは旧姓で活動する丸川大臣の矛盾」とやらを書き立てた。世論もその矛盾を指摘することに夢中となった。丸川大臣はおかしい。自分が夫婦別姓に反対しておきながら、なぜ、旧姓を使い続けるのか、おかしいではないか、丸川さんは矛盾してるではないか! 実にけしからん!……。
そこである。
丸川大臣は、選択的夫婦別姓制度を求める人たちが、その隘路に落ち込むことを待ち構えていたのだ。
彼女は、選択的夫婦別姓のための法改正に反対している。丸川珠代が所属する例の自民党の議員グループ(
衛藤晟一がちょろちょろしてることからもわかるように、あれも
日本会議案件ですけどね)が、地方議会に送った手紙とやらも、「法改正を進めるような請願に反対してくれろ」という内容。その上で丸川珠代は旧姓を通称として利用している。よく考えればわかるように、この丸川珠代のロジックには何の矛盾もない。むしろ、彼女は
通称の利用を貫き通すことで「法改正による選択的夫婦別姓の制度化など必要ない!」と見事なデモンストレーションをやってのけているのだ。
こうした論理的立場に立つ丸川珠代に、
「お前が旧姓を利用していることは矛盾している!」と迫る方が間違っているのだ。ダブスタの指摘をしているつもりで自分自身がダブスタになってしまっている。彼女に「矛盾しているではないか!」と迫ることは、とりもなおさず、通称の利用さえ否定する議論ではないか。それでは、選択的夫婦別姓導入どころか、選択的夫婦別姓反対論より、極めて後退した地点に押し戻されてしまっている。
丸川大臣のあの不敵な笑みは、「まんまと我が術中にはまりおったな」という中ボスの暗黒微笑であり、丸川珠代は中ボスらしく我が身を挺して、日本会議をはじめとする支持母体や自民党の中にいるラスボス達に自分の献身ぶりをアピールしたのだ。