なぜ、やまさんなる人物は、大金を借り入れることができたのか。そこには特異な自己プロデュース力があった。ゴールドマン・サックス(GS)出身の凄腕トレーダーを自称し、資産が100億円を超えることをにおわせていた。
真実味を持たせるかのように、ツイッターのアイコンには9000万円以上するパテックフィリップのグランド・コンプリケーション・ミニット・リピーターを使用。中古でも4000万円以上するフェラーリ812スーパーファストなど、超高級車を複数保有することもたびたびアピール。SNS上では勝ち組として知られていたのだ。
「話すと、時計やクルマに関する豊富な知識で相手を飽きさせない。実際に身に着けている時計を見せてもらいましたが当然、本物。オーデマピゲなどの正規販売店で購入していたので鑑定書も所持していた」(A氏)
だが、メッキは昨年6月に剝がれた。SNS上で前職を問われたやまさんが「GSはシンガポールです! ヘッジ込みで1万6000本アウトラインでやってました!」とツイートしたところ、元外資系証券マンたちが嘘を見破った。かつてGSでトレーダーとして活躍した志摩力男氏が話す。
「GSシンガポールにプロップデスク(自己勘定取引を行う部署)はありません。1万6000本と言いますが、1本100万ドルなので総額1兆円以上。そんな大きなポジションを一人に任せるわけがない。ちなみに業界用語で、ヘッジをせずにポジションを持つことをアウトライトと言います。アウトラインなんて使いません」
やまさんがお金を無心する際に見せていた某口座の残高は92億3356万円だった
こうして炎上騒ぎを起こしたやまさんは雲隠れ。だが、水面下で資産家へのお金の無心を続けていたことが2月に発覚したのだ。
「しつこく催促すると少額だけ返済するようなので、詐欺要件を満たしにくい。金融商品取引法の縛りをくぐり抜けるためか、資産運用代行目的でお金を預かるときも金銭消費賃借契約書しか交わさないようです。法的責任を問おうと動いている方もいますが、今のところ進展は見られない」(T氏)
GSで1兆円以上のポジションを任されていたという資産100億円超えのスゴ腕トレーダーの真相はいかに? 週刊SPA!はやまさんの携帯電話を鳴らし、メールでも質問を投げたが、3月10日時点で返答はなかった。
実は同様にSNSを通じてお金を巻き上げられる事件が、近年多発している。
「出会い系アプリで知り合った台湾人女性が積極的で、会ってもいないのに私もその気になってしまいました。一緒に将来に備えてお金を稼ごうという話になって、彼女の勧めで海外取引所にアカウントを開設。そこに日本の取引所で買ったビットコインを送って、彼女の指示に沿って運用していたら、最終的に海外取引所にアクセスできなくなって、彼女も音信不通に。300万円以上、だまし取られました」(30代・男性)
2月半ばには国民生活センターが、出会い系サイトを通じた詐欺被害の相談が1年で8倍に増加したと発表している。足がつきにくい仮想通貨を利用してカネを巻き上げる詐欺が急増しているのだ。その多くで台湾や韓国などの外国人女性を自称する加害者が登場するが、「実際に詐欺の絵を描いているのは日本人と見て間違いない」(情報商材関係者)という。海外発の仮想通貨詐欺となれば、日本の警察では追いきれないためだ。SNS上には詐欺師たちが跋扈していることを忘れてはならない。