逆に、残念な配信者は「カメラワークに難あり」だという。
「中には、音や内容は良いのに手ブレがすごくて見るに耐えないものがあります。テレビ局時代は、『迫力のある動画にするためには、
カメラではなく自分が動くこと』とよく言われていました。ズームでは見えない部分もたくさんありますし、角度が違えばもっと面白い絵を発見できるケースが実際に多いです。
そして、熟練したテレビカメラマンは次に何が起こるか予測しながら動いています。さすがに真似はできなくても、そのつもりでいるとより良い映像にできると思います」
他、バズるYouTuberになりたい場合はターゲッティングを明確にすることが重要だ。
「テレビではこれまで見たことのない面白い人、人柄に興味が持てる人、嫌な奴でもなんとなく憎めない人を意識的にキャスティングしていました。有名人と対峙させて面白くなることも想定していましたね。
動画でも基本的には一緒ですが、最もテレビと一番違う点は
ターゲットの取り方でしょう。テレビでは幅広い層にまんべんなくウケる人を選びますが、動画ではファン層を想定し、そこに合致した
ペルソナをはっきりさせることが重要かと思います。
お茶の間で家族揃ってテレビを見る時代はもう終わっていて、
個人視聴率が重要視されるようになっています。ゴールデンでも深夜放送のように30代男性だけ見てくれればいい、独身女子が見てくれればいいと視聴者を絞り込んで番組作りをする方向になっていくかもしれません」
鎮目氏の著書『
「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)では、他にも動画でバズるための大小の要素とテクニックが膨大に記されている。
テレビ局のノウハウとエビデンスをもとにした、他に類のない本である。
「確かにテレビ局の撮影技術は明文化されておらず、外にも出ないのでこうした本は珍しいと思います。とはいえこれ一冊をすべて反映するのは難しいので、
気に入った部分だけ参考にしてもらえると嬉しいですね」
【鎮目博道氏】
映像プロデューサー、ジャーナリスト、上智大学文学部新聞学科非常勤講師。92年テレビ朝日入社、社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画し「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュースする
<取材・文/安宿緑>
ライター、編集、翻訳者。米国心理学修士、韓国心理学会正会員。近著に「
韓国の若者」(中央公論新社)。
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