なぜ大企業は非正規労働者への休業手当支払いを拒否するのか?
東京新聞によると、パート・アルバイトに休業手当を支払っておらず、厚生労働省から支払いを要請されていた大企業が少なくとも25社あるという。さらに、そのすべての企業が要請を受けてなお休業手当を支払っていないことも明らかになった。
筆者が事務局次長を務める首都圏青年ユニオンは10社以上の大企業と休業手当に関する交渉をしているが、率直に言って、大企業は中小企業以上に休業手当を支払いたがらない。なぜ中小企業以上に支払い能力のあるはずの大企業が頑なに休業手当支払いを拒否しているのだろうか。
本稿では、大企業が休業手当を支払いたがらない本当の理由は、資金難などではなく、シフト制労働という柔軟なコスト調整手法への固執にあることを論じ、シフト制労働を規制する必要性とその方向性を提案したいと思う。
社員567名・アルバイト7766名を雇う株式会社フジオフードシステム(会社ホームページより)が経営するカフェ「デリスタルト&カフェ」でパートとして働く田中聡美さん(仮名)は、週4~5日・1日5時間ほど働き、月10万円ほどの収入を稼いでいた。田中さんには2人の子どもがおり、共働きとはいえ田中さんのパート収入は家計にとって欠かせない。
フジオフードシステムで働く労働者のうち9割超がパート・アルバイトであり、店舗の正社員は店長1人のみである。店長・正社員が全くいない時間帯もあり、田中さんは店長不在時には実質的な店舗責任者となっているという。フジオフードの運営は、田中さんのように大きな責任を担うパート・アルバイトたちに支えられているのだ。
2020年4月の緊急事態宣言を受けた「デリスタルト&カフェ」の店舗休業の結果、田中さんは6月の営業再開まで完全休業を強いられた。4月以降の休業について正社員には通常給与10割の休業手当が支払われているが、田中さんらパート・アルバイトには4月分として約1万円の休業手当が支払われただけで、5月分の休業手当は一切支払われていない。店舗が再開した6月以降もコロナ前と比べてシフトは半減しているが、減少しているシフト分の補償は一切されていない。パート・アルバイトに対する明白な休業手当差別だといえよう。
田中さんは飲食店ユニオンに加入し、フジオフードシステムに対して、4月以降の休業やシフトカット分について、正社員同様に通常給与10割の休業補償を行うよう要求した。フジオフードシステムは団体交渉の席上で、シフト制労働者のシフトが出ていない期間については休業手当を支払う義務がないとして、パート・アルバイトへの休業手当支払いを拒否した。飲食店ユニオンは引き続き休業手当支払いを求めており、交渉は継続中である。
なぜ支払い能力のあるはずの大企業が、休業手当の支払いを拒んでいるのか。
2021年1月27日の
カフェで週4~5日働く
正社員には休業手当が支払われているが……
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