素人連合のもう1つの武器であるロビンフッドは、コロナ禍の中、爆発的にユーザーを増やした新興ネット証券だ。’14年の投資アプリリリース後、5年でユーザーは1000万人を突破。昨年はコロナ禍で暇を持て余した米国民が増えたこともあってか、3か月で300万の新規口座開設があったと報じられている。
その特徴は“手軽さ”に尽きる。昨年、ロビンフッドの口座を開設したというNY在住の日本人男性が話す。
「個人情報を入力して開設申し込みを済ませれば、すぐに取引が可能になる。日本のように審査がないんです。おまけに口座を開設すると、株がもらえる。
ソーシャルゲームの“ガチャ”のように、3枚のカードを選択する画面が表示されて1つを選択すると、ランダムに株をゲットできるんです。僕がもらったのは当時5ドル前後だった銘柄でした。
日本でいうミニ株のノリで1ドルから株を買えることもあって、ゲーム感覚で投資を始めるにはちょうどいい証券会社です」
この男性は日本で株取引の経験があったため、「シンプルなインターフェースやテクニカル指標が表示できないことに物足りなさを感じて利用するのをやめた」という。
「株だけでなくオプションや仮想通貨も取引できるのは魅力的でしたが、昨年6月頃にロビンフッドを通じたオプション取引で8000万円近くの損失を出したと勘違いして自殺してしまう人が出て、不慣れな商品には手を出すのは控えようと思った。今回のGME相場で心が揺らいでいますが……」
一部の投資家がこぞって買い漁ったコール(買い)オプション
そのオプションとは「権利を売買する」取引だ。今回のケースに当てはめると、一部の投資家がこぞって買い漁ったのは「GME株を’21年4月16日の満期までに12ドル(行使価格)で買える権利」だった。一般にコール(買い)オプションという。
ある投資家はこのコールオプションを’19年12月に、わずか0.75ドルで購入している。当時のGMEの株価は6ドル前後なので、その倍の金額にもなる「12ドルで買える」権利はタダ同然だったのだ。
だが、それから1年以上経った今年1月にGMEは一時450ドルまで爆騰した。1年少々で75倍に値上がりしたのだ。コールオプションを保有する投資家はその権利を行使することで、450ドルの株をたった12ドルで手にすることができたわけだ。
ただし、実際に権利を行使するのは稀だ。現物株以上に、オプション価格の変動幅が大きいためだ。実際のGMEのコールオプション(満期:’21年4月16日/行使価格:12ドル)のチャートを見ると、オプション価格が一時300ドルを超えていたことがわかる。0.75ドルで購入していたら、リターンは400倍! この急騰局面でオプションを高値で売り抜け、莫大な富を築く投資家が現れたのだ。