一方で単身者は「ネット環境を重視する傾向が強い」と安孫子さんは話す。
「テレワークができる方であれば、Zoomといったオンラインミーティングツールを使う機会が増えます。そうしたツールはメールで文章を送受信するよりも多くのデータを使いますし、回線が不安定では会話が途切れ途切れになってしまい、仕事が円滑に進みませんよね。
休日もご自宅で過ごす人が増えています。ネット動画を視聴したり、オンラインゲームをしたりするのに、ネットは欠かせません」
NTTコミュニケーションズは、同社が運営するインターネット接続サービス「OCN」のデータ量の推移を発表している。それによると、2021年1月18日週のデータ量は、2020年2月下旬と比較して、平日昼間は最大で42%、夜間で38%増加している。
住み手としてはネット利用料が賃料に含まれ、入居してすぐに利用できる物件は魅力的だ。全国賃貸新聞が昨年10月に発表した人気設備ランキングでも「ネット無料」は、単身者向け、ファミリー向けのどちらでも1位にランクインしている。
人との接触を抑える目的で、オンラインを活用した非対面でのコミュニケーションが盛んだ。賃貸物件の契約プロセスでも、不動産業者の担当者が物件に出向き、顧客とネットで繋がりながら室内を見せる「オンライン内覧」を行うケースがあるほか、店舗に来店せず担当者と電話を通じて転居の相談をすることもある。契約書締結前に特に重要な項目を不動産業者と借り手との間で確認する「重要事項説明」(通称、重説)は、一定の条件を満たせばオンラインで行える。
このように「会わない」商談が進む一方で、「あえて対面でのコミュニケーションを望む人は多いです」と安孫子さんは現状を明かす。
「転居の相談はオンラインで行っても、物件の内覧や契約の最終段階では、対面を希望されるお客様は多いです。
室内の様子を動画で見るだけでは『本当にここに決めていいのか』と不安になられるからです。物件に着いた時に感じる『なんとく良い、悪い』という第一印象や、エントランスから部屋までの雰囲気、室内の匂いや歩いた感じ、日当たりや風通し周辺環境などはやはり実際に足を運ばないとわからない部分はあります。
身⻑の高い方は天井やドアの高さなどを住む前にチェックし、住んだ後に不便さを感じないかを確かめることもありますね」