政府に文化芸術を支援する気なし? 関係者を落胆させた第3次補正予算の文化芸術活動支援 

政府側答弁への文化芸術関係者の反応

SAVEtheCINEMA(2021/1/28 22:56) 「大袈裟かもしれませんし偏ってると言われるのかもしれませんが、いまの政治は財政に体力のない文化芸術の担い手はいなくなってもいいと本気で思っている節があります。この10ヶ月でよく分かりました。そんな社会で、本当に良いのでしょうか?」 d-倉庫(2021/1/29 9:40) 「緊急事態宣言を受けて、舞台の公演が中止になった場合、そこに掛かった経費を100%補償すると言う経産省の補助金は、結局「法人」だけが対象ということでした。劇団やダンサーなどの殆どは任意団体か個人なので対象外と言うこと。結局、大手しか救われない!!それで時短呼び掛けってどういうこと!?」 WeNeedCulture(2021/1/29 15:21) 「大変残念ながら、今回も大臣からは従来の支援策を提示されるに終わりました。しかし、わたしたちの声がすこしでも政治に届くのだと実感する瞬間です。今後も現場の実態を伝え、活動をつづけていきます」  これが政府が示した支援内容に対する現場の率直な反応だ。

いまだに1000万円の寄付が集まらず、開始すらしていない文化芸術復興創造基金

 最後に小池晃議員は文化芸術復興創造基金の寄付額を確認する。この基金は民間からの寄付に頼っており、1000万円に達した後で助成を開始する仕組みになっている。その質疑は以下の通り。(下記の動画リンクの7分5秒〜) 質疑4 小池晃(5問目): 『もう一つ聞きますが文化芸術復興創造基金への募金。11月に私、質問した時、711万円と。もう1000万円を超えてますよね?』 萩生田光一文科大臣: 『1月27日時点で・・、約766万円、でございます。青信号)』 *金額を言う直前に吹き出して笑いながら答弁 小池晃: 『総理ね、この実態なんですよ。このままでは1000万円にならないと基金、スタートしない。11月に聞いた時は711万円。今、766万円。いつまで経っても基金がスタートしない。これねー、あの、日本の文化芸術の灯を消してはいけないと言うのであれば、自民党の入っている超党派の議連で、民間寄付頼みではなくて、国が責任を持つ基金を国費1000億円を投入して、基金スタートさせるという提言をしています。』  萩生田文科大臣は質問には回答しているので青信号としたが、金額を答える前に笑った理由は全くもって意味不明だ。映像を確認すると、本人も金額の少なさに驚いて思わず吹き出したように見える。担当大臣でありながら金額の進捗を意識していないのかもしれない。 グラフ この文化芸術復興創造金の寄付進捗を見てみると、前回に確認した2020年11月6日から3ヶ月近くが経過しているにもかかわらず、その間の増加は55万円のみであり、支援開始に必要となる1000万円には234万円も不足している。このペースが続くと仮定すると、実際に支援が開始されるのは1年以上先という悲惨な状況だ。  そもそも最後に小池晃議員も指摘している通り、民間の寄付頼みではなく国費を投入する形での基金を整備すべきということは、実に半年以上も前に野党は提言している。具体的には、2020年6月12日の参議院 予算員会にて小池晃議員と同じ共産党に所属する山添拓議員が萩生田文科大臣との質疑で言及している。(下記の動画リンクの7分59秒〜)  この際も萩生田文科大臣は国費投入については、のらりくらりとかわすばかりでまともに回答しておらず、半年以上もこの姿勢を継続していることになる。  これらの質疑を総括して改めて見えてくるのは、絶望的な事実ではあるが「日本の文化芸術の灯を消してはいけない」という政府の答弁は真っ赤な嘘と判断せざるを得ない。実際は、フリーランスなどの個人や中小の団体が利用しにくい支援制度をあえて設計し、美辞麗句を棒読みし、予算金額だけは潤沢に計上している。更に恐ろしいことに、この政府が現場ニーズと全くあっていない政策に莫大な予算を投じた時に何が起きたか思い返してみると、露骨な中抜きや利益誘導である。GoToキャンペーン、アベノマスクなど枚挙に暇がない。申請者から個人を除外するなどして対象を狭める一方、支援の上限金額を2500万円と高く設定するなど不自然な制度設計が目につく今回の補正予算の文化芸術活動支援事業においても、どのように予算が使われたのか注視する必要がある。 <文・図版作成/犬飼淳>
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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