「くらしのマーケット」がある登録業者を突然掲載停止に。掲載サイトと登録業者は本当に「平等」か?

「事業者と対等」とは裏腹の実態

 原告の宮南さんは掲載停止当時、何があったかわからなかったという。「掲載停止当時もお客さんと毎日のようにやり取りして飛び回っていました。<便利屋 ミヤナミ>で検索して頂ければ分かりますが、お客様からの評価も得ていました」  緊急事態宣言下で仕事が減っているところに突然の掲載を停止され、結婚したばかりの妻を連帯保証人にして引っ越し用のトラックを購入したばかりだったという宮南さん。しかも、くらしのマーケットの担当コンサルタントとは掲載停止直前まで売り上げ向上に向けた話をし「対等な関係で売り上げを伸ばしていこう」と言われていたという。  また、指摘を受けたツイートについても同社の指示通り削除をし、真摯に対応していた。確かに、利用規約にはサービス停止の場合について記載がある。しかし、先方から利用停止についての理由の説明が一切ないので、自分が利用規約に違反していたかどうかもわからないという状態だ。  なお、情報の掲載停止後も、それ以前の情報を見た利用者からは直接連絡が来るという。そして、従前のルールに従い同社に利用者から直接連絡があった旨の報告をしても返信はない。しかし、翌月には同社から売り上げの2割の手数料が記載された請求書が送られてくるという。  一方、便利屋仲間の宮南さんから掲載停止の話を聞き、憤りを感じて同社を批判するツイートをした永井さんは何の前置きもなく翌日にアカウントが停止され、2週間後には退店の通知が来て契約を解除されてしまった。くらしのマーケットの事業者向け広告は「下請け生活から抜け出そう」というものであり、対等な立場であることを強調したものだった。そのキャッチフレーズとはちぐはぐな同社の態度に困惑を隠せない様子だ。

不当に安い報酬設定も

 登録業者がランキングに縛られて理不尽な要求に応えたり、不当に安いサービスを提供してしまう実態も存在するという。クレームとも取れる理不尽な要求があったとしても評価を考えると従わざるを得ないのだ。実際、宮南さんもクレームまがいのことを言われたが、ランキングの評価が頭から離れず、引っ越し料金を受け取らない対応をしたことがあったという。  見積もり料金については、例えば引っ越しの場合、登録業者が設定した報酬のレートや利用者の住所、荷物の量などの要素が反映され、自動的に算出される仕組みになっている。報酬のレート設定については「ランキングが上がるようにできるだけ低いレートにすべき」というアドバイスが担当者からあったという。  特に何らかの事情で仕事をクビになり、くらしのマーケットを利用して引っ越し業を始めた高齢の業者の中にはランキングを上げたいばかりに不当に安い値段で引っ越しを引き受けているケースもある。  例えば、炎天下の中の階段作業のある引っ越しを2人で税込み1万5000円で引き受けた場合、そこから税別2割の手数料を引かれ、ガソリン代を抜くと、1人頭の取り分は5000円足らずになってしまう。宮南さんが「さすがに安過ぎるのではないか」と聞くと「この値段にしないとお客様からの評価が下がる。いい口コミを得るためには仕方がない」という返答が来た。  同種のケースについて複数人に聞くと、登録業者は皆一様に「お客様の評価があるので仕方がない」と答えたという。評価や口コミは利用者の任意であるが、フィードバック率はくらしのマーケット社がすべて把握しており「口コミ率が低いので、後から口コミを書くよう利用者にメールでお願いするように」という指導もあった。  宮南さんは「就職活動をストップしたり、他の仕事をリタイアしてサイトを利用して安易に便利屋を始める人たちがいるのではないか。毎月の手数料の支払いもあるため、一度始めたら自転車操業状態になり兼ねず、なかなか抜け出せなくなる。実態を知って考えて欲しい」とした。  本件について、みんなのマーケット株式会社の担当者は「訴状が届いておらず、内容が分からないので現時点ではコメントできない。今後は然るべき対応を取っていく」としている。
次のページ
マッチングビジネスの環境改善のために
1
2
3