中国のワクチン事情について、広東省在住の日本人男性は言う。
「私の住むエリアでは、最優先だった医療関係者への接種がおおむね終わり、今は公務員や国営企業社員などに対してワクチン提供が行われています。
私のような外国人は無償接種の対象外ですが、民間企業が従業員や関係者向けに対して行うものもあり、この場合は外国人でも打てるのです」
民間企業の集団接種なら、より大規模なワクチン横流しも可能かもしれない。さらに北京市在住の日本人駐在員はこう証言する。
「近所の診療所に『ワクチン手に入る?』と聞くと、『手配するよ、問題ない』と。普通に日本でインフルエンザワクチンを打つみたいに、簡単に接種できるそうです」
では、報道のように闇ワクチンは日本で入手可能なのか。週刊SPA!はSNS上で中国製ワクチンの供給を謳う業者を発見。購入希望者を装い、コンタクトを取ってみたところ、先方から返信があった。
「最小単位は10万回分。政府機関か病院名義での契約のみ受け付けている。昨年末までにブラジルやトルコなどに輸出した。
今年は、カンボジアとウクライナに輸出する予定だ。日本にはまだ輸出したことはないが、問題はないだろう」
SNS上で中国製ワクチンの販売を謳う業者とのやりとり。「100個欲しい」に対し「少なすぎる」と返された
さすがに10万回分のワクチンを輸入するわけにもいかず、真贋や供給ルートについて確認することはできなかったが、他にもWeChatの在日中国人グループで聞いたところ「医師からの注文なら手配する」と話す人間もいた。
同業者から渡された販売契約書の雛型
意外だが、実は闇ワクチンは法的に規制されていない。厚労省医薬・生活衛生局の担当者は言う。
「医師が未承認ワクチンを個人輸入し、自身の責任の下で患者に接種することは合法です。ただし輸入に際しては、通関前に専門官が確認する『薬監証明』を申請する必要はあります」
つまり、医師がしかるべき手続きを行えば、公的ワクチン接種よりも先に、合法的に抗体を獲得することが可能なのだ。
ただ、前述の報道に関しては「薬監証明が行われた記録はなく、非合法に持ち込まれたのでは」とも明かした。
この時期に、日本に持ち込まれたワクチンが中国製であることにも必然性がありそうだ。感染症に詳しい
ナビタスクリニック理事長で内科医の久住英二氏は話す。
「ファイザーやモデルナのmRNAワクチンは、極低温環境を保たなければならず、小ロットを個人輸入するのにはハードルが高い。その点、ともに従来型の不活化ワクチンである2つの中国製ワクチンは、通常の冷蔵庫程度の温度で輸送・保存が可能。温度の制約が緩いアストラゼネカ社製ワクチンが安定的に供給されるようになるまでは、自由診療で用いられるワクチンは、中国製一択になる」