NHKを本当に「ぶっ壊す」のは、立花孝志氏ではなく報道部門出身の上層部

報道以外の職場から「お前ら、ええ加減にせえよ」と怨嗟の声

インタビュー取材 ところで、「政権の犬」的な放送というのは、NHKの放送全体ではごく一部にすぎない。例えばNHKスペシャルは終戦の日前後の特集をはじめ素晴らしい内容のものがあるし、ETV特集、バリバラなど、いい意味で「攻めている」番組は多い。 「着信御礼!ケータイ大喜利」のような番組もNHKならではだろう。ドラマも大河や朝ドラだけではなく、実験的な作品を作る。去年は、明智光秀がスマホを駆使して戦国を駆け抜ける「光秀のスマホ」という、大河ドラマ「麒麟がくる」のパロディのような秀作も世に送った。  そういう優れた放送が大半を占める中、なぜ「政権の犬」という印象が生まれるかと言えば、それはニュース。それもほぼ政治報道に集中している。前回の記事で指摘したように、NHKは縦割り組織だ。ニュースを担当する「報道局」を仕切っているのは主に記者出身者、中でも政治部出身者が中枢にいることが多い。  一方、報道以外の大半の番組は「制作局」というディレクター集団が作っている。以前は番組制作局という名称だったので、略して「番制」という呼び方が今でも使われている。  その番制のディレクターにしてみれば、「どうして報道のせいで、私たちまで悪し様に言われなきゃならないの?」と文句も言いたくなるだろう。実際、言われている。番制だけではない。  アナウンサーも技術も営業も、報道以外のNHKのすべての職場から怨嗟の声が上がっている。「報道よ。お前ら、ええ加減にせえよ」というところだろう。営業など、視聴者の矢面に立って受信料を集める仕事だから、なおさらだ。

NHKを本当にぶっ壊しているのは、報道部門出身の上層部の人々

NHK渋谷 実際には報道局にも、政治部、経済部、社会部、国際部などさまざまな部署があり、さらに縦割りになっている。その中にもさまざまな考えがあって、果敢に真実に迫ろうとしている記者やデスクはいるし、そういうニュースも出ている。 「戦没者の遺骨を国が取り違えていたのに公表していなかった」とNHKがスクープし、2020年度の新聞協会賞を受賞したのは、その一例だ。これは社会部だが、政治部にもどの部署にも優れた記者はいる。  しかし報道部門出身の上層部には、政権中枢の意向を気にする人が多いのも事実だ。だから政権寄りとしか思えない報道が出る。そしてNHKは縦割り組織だから、他の部署は報道局のすることに口を挟みにくい。かくして視聴者の信頼はどんどん失われていく。  こうして見ると、本当の意味で「NHKをぶっ壊」しているのは、「ぶっ壊す!」と叫ぶ立花孝志さんたちと言うより、N国党を躍進させるような報道をさせるNHKの報道部門出身の上層部の人たちだと言えるだろう。だからNHKの縦割り組織を打破し、報道のありようを変えることが信頼回復への道であり、「政権の犬」と呼ばれないための道だと思う。
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記者のなり手が増えないのは報道のあり方のせい
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