フリー記者を排除し、事前通告された質問と再質問禁止。これが罷り通るのが日本の政治報道の現実

運営は官邸報道室に丸投げの実態

 記者クラブの会費は、会員1名について月額600円とある。新聞協会編集委員会の「見解」によると、記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される「取材・報道のための自主的な組織」で、「記者クラブは国民の『知る権利』と密接にかかわる」としている。  新聞協会編集委員会の「見解」は、記者会見について次のように書いている。 「記者クラブは、公権力の行使を監視するとともに、公的機関に真の情報公開を求めていく社会的責務を負っています」 「記者クラブが主催して行うものの一つに、記者会見があります。公的機関が主催する会見を一律に否定するものではないが、運営などが公的機関の一方的判断によって左右されてしまう危険性をはらんでいます。その意味で、記者会見を記者クラブが主催するのは重要なことです。記者クラブは国民の知る権利に応えるために、記者会見を取材の場として積極的に活用すべきです」  その建前は「記者会が会見を運営する」としているが、実際は官邸報道室に丸投げしている。参加資格の決定も、実務上は「すべて報道室がやっている」(在京紙記者)のだ。

記者クラブを解体・廃止しなければ、国際標準の会見はできない

 菅首相は日本学術会議の会員の選考方法が「会員などの推薦制で、偏っていて多様性に欠ける」と批判し、「既得権益だ」とまで批判している。しかし、自身の足元の「内閣記者会」のメンバーの選任こそ悪しき前例の踏襲、既得権益そのものではないか。  安倍前首相はコロナ禍に関して計9回会見を開いた。昨年2月29日の会見の一方的な打ち切りに江川氏が「まだ質問があります」と抗議したことで、3月14日からフリー記者枠の記者の質問が認められた。安倍首相会見で、フリーが7年半で初めて質問ができたと評価する向きがあったが、筆者は「記者クラブの廃止なしに、首相会見のオープン化は絶対に実現しない」と言ってきた。  記者クラブ制度を解体・廃止し、海外諸国と長野県庁・鎌倉市役所にある広報(メディア)センターを設置することによって、日本の首相「記者会見」も国際標準に達するはずだ。次期衆院選で「記者クラブ」廃止の是非が争点の一つとなることを期待したい。 <文・写真/浅野健一 菅首相会見写真/首相官邸のウェブサイトより>
あさのけんいち●ジャーナリスト、元同志社大学大学院教授
1
2
3