フリー記者を排除し、事前通告された質問と再質問禁止。これが罷り通るのが日本の政治報道の現実

安倍・菅政権になって記者会見参加を認められたフリー記者は皆無

 最初の緊急事態宣言のあった昨年4月7日以降、首相会見に参加できるのは内閣記者会常勤幹事社19社の各1人と、非常勤社から抽選で選ばれる2人、②~⑤の各分野から各2人を抽選で選んだ8人の計29人だけに限定されている。  官邸の首相、官房長官の会見にフリーランスが自由に参加できると誤解している人が多いが、会見に参加できるのは報道室に登録している11人だけだ。畠山理仁氏によると、11人は畠山氏のほか、岩上安身、神保哲生、江川紹子、安積明子、大川豊、村上隆保、島田健弘、細川珠代、田中龍作、上杉隆の各氏。  この11人はすべて民主党政権時代の2012年に登録されたフリーランス記者で、安倍・菅政権で新たに認められたフリーはいない。フリーの寺澤有氏は参加を拒否されている。神保・田中両氏は「インターネット報道協会」の枠で登録されている。コロナ以降、「政党の役職者、政党機関紙の記者」は参加できないという制限が加わったので、「NHKから国民を守る党」幹事長の上杉氏は参加できなくなっている。  内閣記者会を運営しているのは、常勤幹事社19社(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞、北海道新聞、西日本新聞、京都新聞、中国新聞、ジャパンタイムズ、共同通信、時事通信、NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)。常勤幹事社19社を含む正会員は102社・353名(常勤会員と非常勤会員)で、オブザーバー会員は82社・174名(常勤会員と非常勤会員)だ。  内閣記者会(永田クラブ)には規約がある。1957年に制定され、7回改正されている。最後の改正は2001年だ。筆者は内閣記者会の規約を入手し、ブログ「浅野健一のメディア批評」にアップしている。日本に約800ある記者クラブでこの規約を公開しているところはない。

「記者クラブ」に内在する差別構造

内閣記者会の規約(1ページ目)

内閣記者会の規約(1ページ目)

 筆者のブログには、日本新聞協会編集委員会の公式見解(2002年1月17日)などの資料のほか、『記者クラブ解体新書』(現代人文社)を書くために実施した官庁と報道各社への調査結果なども載せている。  内閣記者会の規約(1957年、7回改正で最後の改正は2001年)によると、クラブは「内閣など、当クラブの取材範囲にある政府機関の取材の便宜と会員相互の親睦をはかることを目的」とし、会員資格は「日本新聞協会に加盟している新聞、通信社および放送機関の記者で、内閣などを担当するものとする」と定めている。  会員は、常勤会員と非常勤会員で構成され、これとは別に「オブザーバー会員の加入も認めることができる」としている。オブザーバー会員は「原則として、日本新聞協会に加盟している新聞通信社と特約関係をもつ報道機関の記者」だが、「雑誌、週刊誌、政府、政党、労組等の機関紙、業界紙などの記者の加入は認めない」「外国の新聞、通信、放送関係社で、日本新聞協会加盟社と同様の新聞通信活動を行っている記者の加入を認めることができる」としていて、以下のような規約が書かれている。 「新たに会員として加入しようとする社は(オブザーバー会員を含む)すでに加入している常勤会員社の二社以上の推薦を受けた入会申込書に入会者名を記して幹事に提出し、総会の承認を得なければならない」 「クラブは、取材上の便宜のため、記者会見などを主催する。クラブ主催などの記者会見は、原則として、会員以外のものの出席を認めない」 「常勤会員は、日常、首相官邸などのクラブ室と、その備品を使用することができる。非常勤会員とオブザーバー会員は、クラブの電話使用を除いて、その便宜が制限される」
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記者クラブを解体・廃止しなければ、国際標準の会見はできない
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