デリバリー特化、「唐揚げ」強化、冷食拡充……。「withコロナ」での生き残りを目指すファミレス業界の戦略

コロナ禍で苦戦を強いられるファミレス業界

 コロナ禍のなか、あらゆる手で生き残りを図ろうとするファミレス業界。  以前の記事では「ジョイフル」(本社:大分県大分市)、「フレンドリー」(本社:大阪府大東市、2018年よりジョイフル傘下)という、西日本のファミレス地場大手2社のコロナ禍における「不採算店舗の削減」や「業態整理」の動きを紹介した。 ● コロナ禍で一気に200店舗閉店の衝撃――急速な閉店で「ファミレス難民問題」も|HBOLコロナ禍のファミレス狂騒曲―かつての関西大手「フレンドリー」、新型コロナを機に「脱ファミレス」を決断|HBOL  こうした店舗整理は他の大手ファミレス各社もおこなっており、例えば「ガスト」「バーミヤン」などを展開するすかいらーくHDは2021年末まで全体の1割弱にあたる約200店を、「ロイヤルホスト」「てんや」などを展開するロイヤルHDは2021年末までにグループ全体で約90店を閉鎖することを発表している。  しかし、大手ファミレス各社の「withコロナ戦略」は「閉店」や「合理化」のみではない。今回は、ファミレス各社の、それぞれの個性を生かした「withコロナ」戦略を追っていく。
生き残りを図るファミレス業界

コロナ禍のなか試行錯誤を続け生き残りを図るファミレスたち。
コロナ後にはどういった姿を見せてくれるのであろうか。

デニーズ、ファミレスを「配達+ドライブスルー専門店」に

 埼玉県越谷市にあるセブン&アイHD(本社:東京都千代田区)傘下のファミレス「デニーズ南越谷店」。一見すると「普通のファミレス」にしか見えないこの店舗で、デニーズの新たな挑戦が始まっている。  コロナ禍でデニーズが挑むのは「宅配の強化」。実はこのデニーズ南越谷店はコロナ禍により8月に閉店したばかり。同社はこの店舗跡を、外観もそのままに「デリバリー基地」へと改装したのだ。
デニーズ南越谷店

デリバリー&テイクアウト専門の「デニーズ南越谷店」(埼玉県越谷市、ニュースリリースより)。
外観は一般のデニーズ店舗のままだが、店内で飲食することはできない。

 デニーズによると実店舗の「デリバリー基地」化は「コロナ禍でなかなかレストランに足が進まない」という声に応えたものだといい、メニューはハンバーグ、パスタ、サラダなど約60種類、なかにはデリバリー限定の商品もラインナップされる。配達は自社でおこなう訳ではなく、注文窓口は「出前館」、「UberEats」、「dデリバリー」を使う。  さらに、この店舗の大きな特徴となるのが「ドライブスルーの設置」だ。このドライブスルーは駐車場内のインターホンを使って注文、携帯電話で出来上がりの連絡を受けて商品を受け取る形式で、顧客と店員との直接の会話を最小限に留める仕組みとなっている。これまでのデニーズと同様に「EPARK」からの予約も可能だ。  ドライブスルーといえば郊外のハンバーガーチェーンやカフェチェーン、牛丼チェーンではお馴染みのものであるが、郊外のファミレスメニューを提供する店舗は珍しい。  実は、同業他社でも2010年頃からファミレスの「ガスト」や長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」、同系列のとんかつ店「浜勝(濵かつ)」などでも一部にドライブスルーを設けている店舗はある。しかし、それほど利用が伸びなかったためか、近年は対応店舗があまり増えていなかったり、結局「ドライブスルーを撤去」した店舗も多くみられていた。  これまでなかなか定着しなかったファミレスのドライブスルー。デニーズでは「くるまでデニーズ」と題して既存のファミレス店舗へのドライブスルー設置も進めるとしている。 「コロナ禍」という逆風を追い風にして、ドライブスルー設置型のファミレスが全国各地の同業他社へも広がっていくこととなるのだろうか。
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「すかいらーく」は唐揚げテイクアウト強化でケンタッキー超えを目指す
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