コロナ禍を機に「ケンタッキー超え」で業界首位めざす「すかいらーく」
ファミレス業界最大手である「
すかいらーくHD」(本社:東京都武蔵野市)が取り組んだのは、
唐揚げ専門店「から好し」の強化だ。
から好しは2017年10月に1号店を出店したばかりの新しい業態であるものの、その味は2018年4月には日本唐揚協会の「第9回からあげグランプリ」で金賞を受賞する確かなもの。すかいらーくHDはコロナ禍により全業態により約200店舗の閉店を発表しているが、そうしたなかでも「から好し」は新規出店を続けており、なかには既存の「ガスト」など他業態から転換した店舗もみられる。
すかいらーくHDが運営する「から好し」の店舗(東京都江東区)。
「持ち帰り」を大きくアピールする看板も見える。
から好し好調の理由は「
持ち帰り率の高さ」。すかいらーくHDによると、「から好し」はコロナ禍の前からファミレス業態よりも持ち帰り比率が高かったといい、コロナ禍でも売り上げは順調に推移。今年夏からはファミレス「ガスト」に「から好し」店舗の併設を進めており、
2020年10月末時点では約195店にまで拡大した。この「ガスト併設型のから好し」の出店により、
2021年3月末には1130店にまで店舗数を伸ばす計画だという。これによってから好しの店舗数は国内に約1130店(2020年3月時点)を展開する「
ケンタッキーフライドチキン」の店舗数を上回り、同社はファミレスに続き「鶏唐揚げ」業界においても日本最大の店舗数となる可能性が高い。
12月現在、から好しはクリスマスと年末年始に向けて家庭向け「パーティーセット」の販売にも大きな力を注いでいる。奇しくもコロナ禍によってケンタッキーを凌ぐほどの一大チェーンとなる見込みとなった唐揚げ店「
から好し」。近い将来には「クリスマスチキン」の国内シェアを「から好し」と「ケンタッキーフライドチキン」で二分する時代が来るかも知れない。
持ち帰り商品の強化は「
ロイヤルホスト」などを運営する「
ロイヤルHD」(本社:福岡県福岡市博多区)も同様だ。
同社はこれまでも店頭でレトルトカレーなどを中心に持ち帰りメニューをラインナップしていたが、なかでもコロナ禍を機に大幅に拡充されたのが家庭用フローズンミール(冷凍食品)の「
ロイヤルデリ」である。
ロイヤルホストの店舗(東京都墨田区)。
ロイホが強化しているのは「世界各国料理の冷凍食品」だ。
ロイヤルホストといえば「カレーフェア」をはじめ、タイ、シンガポール、アメリカなど数年ごとに世界各国の料理フェアをおこなうことで人気を集めているが、今回拡充したメニューは多くがそのノウハウを活かしたもの。新たな「ロイヤルデリ」のラインナップは全45品で、店舗でも人気のレギュラーメニュー「コスモドリア」をはじめ、「ル―ローハン(魯肉飯)」「鶏肉のガパオ風炒め」「チキンのチリビーンズ」など、他社ファミレスの持ち帰りメニューとは一味違う商品が多くみられることが特徴だ。
コロナ禍で海外旅行に行けなくなって以降、新大久保など海外のショップが多い街は旅行気分を味わおうとする観光客で賑わいを見せているというが、ロイヤルデリの各国料理強化もこうした動きを見据えたものであろう。
ロイホは同業他社とは一線を画した海外メニューフェアを行うことも特徴とする。
客単価は業界最高クラスであり、内装も少し高級感がある。
今年に入り客席間には透明パネルが設置されるなど、感染症対策が強化されている。
なお、同社のウェブサイトにはロイヤルデリの取り扱い店舗が掲載されているが、取り扱い品目は店舗によって異なっており、12月現在は設備の都合上一部商品のみしか扱っていない店舗も多い。「ロイホの持ち帰りで旅行気分を味わいたい」という人は、事前に各店舗にロイヤルデリの取り扱い商品を確認しておくことをオススメする。
ところで、ロイヤルHDは以前から完全キャッシュレス型の実験店舗「ギャザリングテーブル・パントリー(GATHERING TABLE PANTRY)」の運営もおこなっている。
同業態はタブレットで注文して電子マネーで精算するため店員との接触が少なく、「withコロナに相応しい業態」であるともいえる。
実験店でノウハウを蓄積している同社だけに、筆者は都心既存店をこの「キャッシュレス業態」へと転換する動きも生まれるのではないかと予想していたのだが、果たして――。
ロイヤルHDのキャッシュレス実験店「ギャザリングテーブル・パントリー」(東京都中央区、現在は世田谷区二子玉川に統合移転)。
コロナ禍に相応しい業態といえるが、新規出店はあるのだろうか。