「地元・小田原の間伐材で楽器を作ろう」。コロナ禍の中で、音楽と森がつながる

コロナ禍の中でDIYが流行、音楽の需要も増える

福田さん自前の小田原間伐材を使用したカホン

福田さん自前の小田原間伐材を使用したカホン

福田:準備が整い、2020年3月の地元イベントで間伐材を使ったカホンのワークショップをする予定で、20セット準備していました。ところがコロナウイルスの感染が広まり、イベント自体が中止となってしまいました。  最初はどうしたものかと思っていましたが、緊急事態宣言で外出制限が出た影響でDIYが流行。また巣篭りで音楽の需要も増えたことで、手軽にインターネットで購入できるような楽器は軒並み売り切れとなりました。  海外で作って輸入しているものが多いため、コロナ禍で工場や物流が止まり日本に入ってこなくなったのです。そこでピンチをチャンスにすべく、地元の間伐材を使ったカホンをDIYキットとして販売することにしました。
カホンは楽器自体に跨って、側面や縁を手で叩いて演奏する

カホンは楽器自体に跨って、側面や縁を手で叩いて演奏する

 しかし、キットだけ販売しても叩き方がわからなければ楽しめないので、音楽教室の講師のレクチャー動画をつけて大村楽器ならではの販売をすることにしました。「もっと楽しみたい」という方のために、YouTubeで大人気の講師とオンラインセッションできるコースも設けました。  いちばんシンプルなカホンDIYキットとレクチャー動画をつけたものが5500円(税込)と安価なのは、もともと小田原市が始めた企画なのでそこに値段を合わせています。  大村楽器として儲けはないのですが、これをきっかけに地元の森や環境に、さらには音楽に興味を持つ人が増えてほしいという思いで継続しています。より多くの人に興味をもっていただけるように、来年に向けて改めて企画を練っているところです。

高度経済成長期に忘れ去られた日本の森

小田原林青会の半纏を羽織る髙木大輔さん

小田原林青会の半纏を羽織る髙木大輔さん。小田原林青会とは、小田原地区で製材業・木材卸売業で組織する小田原地区木材協同組合の若手集団で、次の世代へ豊かな森を引き継ぐために木育などの啓蒙活動などを行っている

 大村楽器で販売しているDIYカホンキットを作成する、竹広林業の髙木大輔社長にも森や間伐材についてお伺いした。 ――漠然と日本には森が多いという印象を持っていますが、実際の日本の森はどうなっているのでしょうか。 髙木:まず森には、実や種で自然に植樹する天然林と、人間が植樹した人工林があります。明治・大正時代の日本は人口が増えていき、必要な木材を山からどんどん切り出しました。その結果、多くの山がはげ山になったのです。  戦後になると全国で山に木を植えようという拡大造林が始まりました。戦争で焼け野原になった街に建物を建てるための材料として、一番ポピュラーで成長の早い木材が選ばれたのです。「木を植えれば困ることはないだろう」という考えだったのだと思います。  しかし経済復興著しい日本で木材を使うには、その時の人工林の木は十分には育っておらず、需要と供給のバランスがうまくいきませんでした。貿易大国になった日本は自動車など工業製品を輸出し、海外の農産物や木材を輸入するようになりました。そうしていくうちに、日本の森は忘れ去られたのです。
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未来を見据えた植林と森の間伐・手入れが必要
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