コロナ禍の中感じた、プリキュア世界と現実のシンクロニシティ

プリキュアファンのライフサイクルにも影を落としたコロナ禍

自作フィギュア

ステイホーム中にPCが壊れ、悲しみに暮れながら自作したという自身のフィギュア。手先も器用なプリキュアおじさん

 我々のようなファン、好事家、オタク(呼び方はこの際何でもいいですが)は毎年、2月始まりの1月終わり、そして3月に春の映画、10月に秋の映画が1本ずつ公開される、そういう独特のサイクルに合わせて生きていて、2004年以降の出来事が各作品に結び付いている為、やたら記憶が鮮明な事でも知られています。スポーツの名試合と西暦がリンクしているような感じでしょうか。また、毎年2月1日は「プリキュアの日として日本記念日協会に登録認定され、我々のような者にとっての元旦のような日になっていました。 「いました。」と過去形で書いているのは、2020年から世を騒がせている新型コロナウイルスの脅威がプリキュアにも及び、ここまでさんざん説明してきた「毎年恒例の春の映画」にもその影を落とす事になったからです。  17年も続いているシリーズですから、変わっていく時代の要請というか、そういった何かに応えるように「いま」の要素を取り入れるケースもあれば、先の3年ルールのような偶然時事に沿ってしまったようなケースもある中、2020年は本当に我々のような者にとって、真面目なトーンで言うような事では無い事だとはわかっていながらも「なんか世の中がプリキュアに寄せて来ている……」と言いたくもなるよな!という1年でした。

現実世界とプリキュアのシンクロニシティ

 なにせ2020年度のプリキュア『ヒーリングっどプリキュア』では、プリキュア達は「地球のお医者さん」という任務を負った役どころで、地球を蝕んで自分達にとって理想の環境を作る事を目的とした「ビョーゲンズ」なる敵と戦うというストーリー。  放送が始まってわずか1ヶ月ほどで世の中は未知の疫病に関するニュースで溢れ、マスクやトイレットペーパーは買い占められ、緊急事態宣言が出された4月にはテレビの放送自体もストップ(9週間に渡る再放送)、ニュースを見れば大の大人が真面目な顔して「手を洗おう」みたいな、僕のような者が人目を憚って日常的に見ていた作品で出てくるような文言を掲げる世界になってしまいました、手洗いが大事なのはもちろんそうなんですが。作品の企画自体は前の年の5月には動き出していると聞きますから、作り手の方たちもまさかこんな時流に乗り切った作品になるとは思ってなかったんじゃないでしょうか。  そして、3月に公開予定だった恒例の春の映画は2度の延期に、ステイホームだなんだと言いながらいつ公開されるのかと待っていたその映画の内容が「延々と繰り返す”明日の来ない”時間に閉じ込められてしまったプリキュア達が、そのループから脱出する」というストーリーだと言うんだからもう世の中がプリキュアに寄せてきているくらいの事を言いたくもなるというもの。  この延期を受け、無人の劇場で急遽撮影されたと思われる、ショーに使う着ぐるみによる「みんなに会えるのは、もう少し先になりそうなんだ…」「みんなが元気でいられるように、小まめに手洗いを云々」という動画は、慌ただしかったであろうスケジュールや、関わった人の苦労が偲ばれ過ぎると同時に、起きている出来事がまるでプリキュアの活躍する世界のようでした。肝心のプリキュアはどこにもいませんという状況の中「プリキュアが現実に起きている未曾有の危機を前に、子供たちに向けてメッセージを発信している」という、大袈裟な言い方ではありますが作品と現実に地続きな部分があるように感じられる、かつてないものを目にした気がしました。  結局春の映画は無事10月に公開され、僕のような者の時間もようやく動き出したような感じに。テレビの放送は2月中も続く形になったようです。
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シスターフッドにエンパワーメント、多様性も体現していた
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