浦和・大宮など「住みたいランキング」で人気の街の魅力も。野球マンガ『おおきく振りかぶって』の聖地を巡る旅

「スポ根」要素は皆無、繊細な心理描写、細かい日常風景

『おおきく振りかぶって』(講談社)

『おおきく振りかぶって』(講談社)

『おおきく振りかぶって』(講談社)は、無名の公立新設高校の新入野球部員たちが甲子園を目指す物語です。監督は女性で、県立西浦高校の新設野球部に集った10人の選手たちは、弱気で卑屈な性格の投手の三橋を中軸に甲子園を目指します。  この作品は野球マンガに大きな転換をもたらしたとして、高い評価を受けています。いわゆる「スポ根」要素は皆無に近く、三橋のキャラクター設定をはじめ繊細な心理描写、細かい日常描写なども特徴的です。野球マンガとしては独特のスタイルを持つ作品に仕上がっています。  ひぐちアサが描くこの作品は2003年から『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載が始まり、何度か中断があったものの現在も連載中です。2006年に第10回手塚治虫文化賞「新生賞」、2007年に第31回講談社漫画賞一般部門を受賞し、同年には文化庁メディア芸術祭10周年企画「日本のメディア100選」マンガ部門にも選出されています。  またテレビアニメとしては、第1期として2007年にTBS・MBSで放送され、原作の単行本8巻までのストーリーを描いています。2010年には第2期が放送されました。マンガの単行本は2019年に1500万部を突破しています。またテレビアニメは海外のアニマックスで放送されてもいます。

旧制中学時代から続く、埼玉県立浦和西高校がモデル

県立浦和西高校(筆者撮影)

県立浦和西高校(筆者撮影)

 県立浦西高校のモデルは、ひぐちアサの母校である埼玉県立浦和西高校だというのが定説になっています。この高校は1934年に開校した埼玉県立浦和第二高等女学校をルーツに持つ公立高校です。  戦後は浦和第二女子高校になり、1950年に共学となって現在の校名になりました。マンガ家の山本鈴美香がこの高校の出身で、1970年代から1980年代にかけて一世を風靡した彼女の代表作『エースをねらえ!』(集英社)もこの高校がモデルとされています。  テレビドラマでは神奈川県でロケを行っていた関係から、県立西高校は神奈川のイメージも強いのですが、原作では宗像コーチ宛の封書の宛名が「浦和市領家」と記載されていたこともあり、やはり県立浦和西高校がモデルだというのが妥当でしょう。ただ当時のテニスコートは姿を消した中庭である「万葉の庭」になっているようです。
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浦和西高校のまわりを歩くだけで、マンガやアニメで見かけた光景が
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