⑦BLM運動
5月下旬、アメリカ・ミネソタ州で起こった黒人男性、ジョージ・フロイド氏を白人警官が首を踏んで窒息死させる事件が起こり、それに対し、白人の終わることなき黒人への暴力が世にさらされることとなった。
これに対する抗議運動「ブラック・ライヴス・マター」は黒人のみならず白人のリベラル層にまで浸透したが、この運動にエンタメ界からも強い共感が寄せられた。ヒップホップでもラン・ザ・ジュエルズのアルバム『RTJ4』やリル・ベイビーの『The Big Picture』などのプロテスト・アンセムが生まれ、愛された。
ネットフリックスでも黒人の人種問題を扱ったスパイク・リーの『ザ・ファイブ・ブラッズ』、癌で突如として世を去った『ブラック・パンサー』の主役、チャドウィック・ボーズマンの遺作『マ・レイニーのブラックボトム』などが話題を呼んだ。
⑧テイラー・スウィフトの転身
7月、テイラー・スウィフトが前触れもなく突如アルバム『Folklore』を発表。これまでのポップなイメージを覆し、コロナ禍のなか、内省的な気持ちを表したインディ・フォークのスタイルに大変身した彼女のストイックな歌の数々は大きな反響を呼んだ。12月には第2弾の『Evermore』も発表し、さらに世間を驚かせた。
⑨TikTokで過去作が名曲が再ブレイク
若者たちにとっては外に出られない退屈な時期だったが、そんなときでも流行は生まれた。その中心となったのは動画アプリ「TikTok」だったが、そのなかのひとつに中年の不良大人が1970年代のフリートウッド・マックの名曲「Dreams」に乗り、穏やかに気分爽快になるものが大ヒット。この曲を収めた名作アルバム『噂』が42年ぶりのヒットとなる思わぬ現象も生まれた。
2020年はボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、ポール・マッカートニーといった70代を超えたレジェンド・ロッカーの新作も絶賛で迎えられた。
⑩逆境のなか『鬼滅の刃』が記録更新
コロナ禍は後半には収まったかのように見え、世界がコロナ禍の最中に日本では劇場版『鬼滅の刃』が興行記録を塗り替える異例のヒットが生まれていたが、その矢先に国際的にコロナの第二波が勃発。イギリスからは変異株も現れ騒ぎも広がっているが、同時にワクチン接種も開始。2021年はどちらの方向に進み、エンタメはそれに対しどう立ち向かうことになるだろうか。
<取材・文/沢田太陽>