メディアミックス展開もうまく行き、大ヒットした『鬼滅の刃』(時事通信社)
世界がコロナショックに襲われた激動の2020年。映画や音楽といったエンタメ業界も重苦しいムードに包まれた一年となったが、そんななかでも特に注目するべきニュースを音楽ジャーナリストの沢田太陽氏がピックアップ。10個のキーワードから、異例の年を振り返る。
①ビリー・アイリッシュが大ブレイク
2020年の世界のエンタメ・ニュースは派手な話題からはじまった。18歳の天才少女ビリー・アイリッシュがグラミー賞の主要4部門を総ナメするという、1981年のクリストファー・クロス以来となる快挙を成し遂げた。内向的でストレスによるメンタル・ヘルスの問題を抱えやすい、「Z世代」とも呼ばれる現在の10〜20代の気持ちを素直に歌った、沈鬱な気持ちを共有しながらも優しく語りかけるような彼女の歌は世代と国境を超えた現象となった。
②『パラサイト 半地下の家族』
続いて2月、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が非英語圏の国の作品で史上初のアカデミー賞作品賞受賞の快挙を成し遂げた。これをもって、映画の祭典アカデミー賞は英語圏のものだけでなく、言語を超えての参入が可能なものとなった。
③BTS
その熱の冷めやらぬまま、同じ韓国のBTSのアルバム『MAP OF THE SOUL:7』」が、アメリカ、日本、イギリス、ドイツ、フランスの世界5大マーケットで初登場1位の快挙を達成。彼らはこの年の9月にはシングル「Dynamite」で、アジア勢としては坂本九の「上を向いて歩こう」以来、57年ぶりの全米1位の快挙も成し遂げた。
④配信コンサートが主流に
そんななか、3月にはコロナ禍が世界を襲い、世界中のロック・フェスティバルが中止となり、日本でもフジロックフェスティバル、ソニックマニアがその影響を受けた。コンサート事業はすべて配信によるものに切り替わった。ここでもビリー・アイリッシュやBTSが話題を集めることが目立った。
⑤映画の劇場公開中止
同じく、映画館も上映ができなくなり、世界中の映画業界が大打撃を受けた。映画館は国際的に8月の末頃から再開を始めたが規模は極めて小さく、国際的ヒットと呼べるのはクリストファー・ノーランの新作『TENET テネット』のみ、といった状況だ。
⑥ネトフリでKドラマが爆発
そんな映画界とは真逆に、コロナ禍で外出できなくなった人たちの注目を集めたのが動画配信のコンテンツだ。とりわけネットフリックスの配信の韓国ドラマに話題が集中。『愛の不時着』『梨泰院クラス』『サイコだけど大丈夫』といったドラマが日本、そしてアジア全域で空前のヒットを記録した。こうしたところにも現在の韓国のエンターテイメントの質の高さ、コンテンツを世界に向けて売ることへの強い積極性が非常時の最中に実証されることとなった。