9:1を覆すモチベーション――エビソル社長・田中宏彰氏に聞く
http://www.ebisol.co.jp/)の田中宏彰社長だ。
田中氏がほとんどゼロからの市場開拓、すなわち「9対1」の市場に挑むのはこれが初めてではない。田中氏の前職は、総合人材サービス企業・インテリジェンスの執行役員。在職中の2000年に三井物産とのジョイントベンチャーで、アルバイト採用メディアの『OPPO』を立ち上げている。田中氏が『OPPO』を立ち上げた当時、電話とWebの比率は今の飲食店予約と同じく9対1だったという。それを今日では完全に比率が逆転するまでに導いたのが田中氏だったのだ。
「当時、求人情報といえば紙媒体が主流で、デジタル化してマッチングすることは世の中の期待も高かったのですが、既存の企業は紙媒体での収益もあったので、なかなかWebに絞り切れないでいた。中でも非正規雇用領域は当時未着手で、その分野がスッポリ空いていた。そこでWebに特化した求人サービスを始めたんです」
OPPOは5年で売上30億円まで成長し、その後本体のインテリジェンスと統合、さらに求人情報「an」で知られる学生援護会のМ&Aによって、さらに事業を拡大している。
田中氏は統合後も事業を統括していたが、2011年、一区切りついたとして新たなビジネスを立ち上げるべくインテリジェンスを退職、エビソルを起業した。その起業にあたっては、求人サービスに携わったノウハウは大いに生かされている。
「当社では“O2O(オンライン・トゥ・オフライン)”と標榜していますが、オンラインからオフラインのサービスに導くことに強い分野のひとつが「人材サービス」で、採用と集客で目的は違いますが、どうやって人を呼ぶのかは同じです。つまり、求人も応募管理のWeb化が非常に重要ですが、飲食でも入口をWeb化することが突破口になる。Web予約を手掛けるサービスは一応今でもあります。ただ、予約の意志表示はWebでも、結局はお店から確認電話をしてのやり取りになる。または“在庫型”と呼ばれるリアルタイム予約もありますが、ダブルブッキングの危険を恐れて、店側はごく一部の座席しかサイトに渡さない。そのため、Web経由で予約したら取れなかったけど、電話したら取れるなんて事も少なくなかったんです。これではWebのプライオリティが皆無です。こうした状況を改善すべく、お店全体の座席を電話でもWebでも入った予約は台帳として一元化する必要があった。その上でWebの比率を上げていかないと、全体のWeb化は進みません」
⇒【後編】圧倒的不利な状況を覆すには”思い込める”力が必要(http://hbol.jp/23585)に続く
<取材・文/杉山大樹 撮影/菊竹規>
※「ebica」とは、これまで紙で管理されていた飲食店の予約台帳を、パソコンとタブレット端末で一元管理できるシステム。24時間365日対応可能できるので、これまで営業中しか対応できなかった電話予約と異なり、営業時間外の予約も取り込めるメリットがある。また、予約管理だけでなく日々の売り上げや推移、さらにはお客の嗜好や来店履歴などを登録して蓄積したものをデータベース上で確認することもできるシステムだ。いわば飲食業界におけるITインフラのようなもので、それさえ整えばWeb予約に慣れている利用者は、Webを使わない手はないだろう。田中氏はこれを武器に電話とWebの予約比率の逆転を目指している。
たなかひろあき●獨協大外国語卒。1996年インテリジェンス入社、2005年執行役員。2011年10月株式会社エビソルを設立。
PCやスマホのおかげで、例えば旅行に行くとき飛行機や新幹線、あるいは宿泊先のホテルをWebで予約することは珍しいことではなくなった。ところが、レストランなどの飲食店に予約を入れるときは電話でという人は多いのではないだろうか。飲食店に関しては『食べログ』のような口コミサイトや『Hotpepper』のようなクーポンサイトは広く浸透しているものの、旅行業界のように一括して予約が可能なサイトがほぼ不在といっていい。このため、飲食店予約においては電話とWebの比率は9対1となっているという。
「9対1を覆す」――。
この一見無理難題に思われる状況を覆すべく、飲食店予約管理システム「ebica(エビカ)予約台帳」(※)を立ち上げたのが、株式会社エビソル(