「死んだら辞められますかね」……。生活困窮者をさらに追い詰める「企業のブラック化」が止まらない
新型コロナウイルスは感染のみならず経済的にも人を追い詰める。完全失業者数が3年ぶりの高水準に、自殺者数も急増。その猛威ぶりは数字として表れてきている。労働の現場でいったい何が起きているのか?
12月15日に厚労省が発表した統計によると、コロナ関連の解雇や雇い止めによって失業した人の数は7万6543人。働く意思があるのに職がない完全失業者の数も200万人を突破するなど、雇用を取り巻く環境は極めて厳しい。
では、職があれば安心かというと、そうとも言い切れない現実がある。退職代行サービスを手がける弁護士の嵩原安三郎氏は日々、退職希望者の相談に乗っているが、「コロナの影響をまざまざと感じる」と言うのだ。
「雇い止めや解雇が増える一方で『辞めたくても辞めさせてもらえない』という事案がすごく増えています。給料を2~3か月も遅配してるのに長時間拘束し、『次に人が入ってくるまで辞めさせない。会社に来なかったら家まで行く』なんて脅すのは日常茶飯事。雇い主からしたら、その社員やアルバイトに飛ばれたら現場が立ち行かなくなるから、意地でも辞めさせないんですね。
ただ、そんな企業に求人広告を出す余裕なんてあるわけない。相談に来る人はそれもわかっていて、もはや自分ではどうしようもなくなって万策が尽き、退職代行に駆け込んでくるんです。ある相談者が言った『死んだら辞められますかね』という言葉が耳から離れません」
この現象は、特定の業態に限ったものではないようだ。看護師、自衛隊、建設業、飲食業……あらゆる業界から相談が寄せられるという。
「医療従事者が少し多い印象はありますが、基本的には大企業から公務員まで幅広い職種の方が相談に来ます。コロナに直結した例で言うと感染者が増えた北海道への出張を強要された事例もありました。その方はご高齢の両親と一緒に住んでいらしたのでとても行ける状況ではないのに、首を縦に振るまで説得されたと。
ただ一方で経営者側と話すと、相当深刻なんですね。飲食店系のHPを作る会社は売り上げが前年比95%減で、給料を支払いたくてもそれができない。本来ブラック企業ではなかった会社までブラック化してしまい、当事者では埋めがたい溝ができてしまっている印象です。残業代や給与の未払いに対して請求をかけるんですが、それでも支払われないと労働審判を起こして裁判で争うことになる。たいていの場合は支払いを命じる判決が出ますけど、労使ともにクタクタになってる中での話ですから大変です」
辞めたくても辞められない。行き場のない労働者が急増中
あらゆる業界から相談が
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