学者・元官僚・実業家の顔を巧みに使い分ける「竹中平蔵」、再登板で日本はどうなる

新自由主義者は中国の夢を見る

 これまで「米国追従だ」と散々批判されてきた竹中平蔵氏だが、今度は肝いりの政策が共産党の大門実紀史議員から「中国のマネをするな」と反対に遭っている。AIやビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市設計を目指す「スーパーシティ構想」だ。  竹中氏が有識者会議の座長を務め、5月に法案が可決。コロナ禍で自動運転や遠隔医療などの期待は大きいが、一方で政府や企業に膨大な個人情報が集まり「監視社会」の恐れも指摘される。『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)の著者である神戸大学教授・梶谷懐氏はこう話す。 「中国・アリババの拠点がある杭州市を、内閣府はスマートシティの一つの例に挙げています。欧米ではプライバシーの問題で頓挫したアイデアも、中国では実行できる。デジタル社会において、効率を追求する新自由主義的な政策を進めるには、皮肉なことに、小さな政府ではなく、中国のような“強い政府”が求められているのです」

「ショック・ドクトリン」の懸念

 コロナ対策でIT化の遅れが浮き彫りとなった日本とは対照的に、中国政府はハイテク企業のビッグデータを活用。人々の行動を制御し、感染を抑え込んだ。国家と民間資本が一体となる習近平政権の目指す経済体制(シーノミクス)を見習い、「スガノミクス」でも規制撤廃・デジタル化を推し進めるべきとの声も聞こえる。しかし、こうした危機的状況に乗じて、早急に改革を進める「ショック・ドクトリン」を梶谷氏は警戒する。 「中国革命の父・孫文が『中国人はバラバラの砂のようだ』と言ったように、中国社会は個人がまとまるのが難しく、政府が上から管理するしかないと考える人も多い。日本は業界組合や地域コミュニティなどの中間団体がしっかりしており、現場からの視点で政府と対峙してきた。それを竹中氏は既得権益と呼び、コロナ禍を機に一掃しようとしています。効率性だけを考えれば見直すべきものもある。ただ、中間団体を一掃すれば、弱い存在の個人が国家や大企業と直接向き合う社会になる。上からの改革を目指す竹中氏にとって、中国は理想的な社会かもしれないが、日本では中間団体を生かす方法もあるのではないでしょうか」  次は中国の背中を追うつもりか。 【ジャーナリスト・佐々木 実氏】 ’66年生まれ。日本経済新聞社を経てフリーランス。大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『市場と権力』(講談社)が’20年9月に文庫化。 【参議院議員・上田清司氏】 ’48年生まれ。’93年衆院選に初当選(3期)。’03年より埼玉県知事(4期)。’19年参院補選で国政に復帰。現在、国民民主党・新緑風会派に所属。 【神戸大学教授・梶谷 懐氏】 神戸大学卒業後、中国人民大学(財政金融学院)に留学、神戸学院大学経済学部准教授などを経て、’14年より現職。著書に『中国経済講義』(中公新書)など。 <取材・文/梶田陽介 村田孔明>
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