「対戦ゲーム」のように国会を報じることで見えなくされていること

菅義偉総理

なにも回答していなくても報じ方一つで印象は変わってしまう
(時事通信社)

 政治と報道をめぐる短期集中連載第8回。今回も前回に引き続き、国会報道のあり方を考えたい。対戦ゲームの実況中継のような国会報道は論点を浮かび上がらせずむしろ見えなくさせる。そのような国会報道を変えていくために、国会審議に対する別の見方を紹介したい。

「反発」という空疎な言葉

   前回の記事でも「照準」「初陣」「防護」「決定打に欠けた」など、まるで対戦ゲームを実況中継しているかのような国会報道の言葉遣いに注目した。  前回は触れなかったが、前から違和感を抱いてきた言葉として、今回はそれらに加えて、「反発」を取り上げたい。  「反発」という言葉は、野党に対して多用される。「野党は反発」というのが典型例だ。試しに2020年1月1日から12月7日までの朝日新聞と毎日新聞の紙面記事を「野党は反発」で検索すると、朝日新聞で2件、毎日新聞で9件ヒットした。具体的には下記の通りだ。 <朝日新聞> (1)「森氏は11日の衆院法務委で「個人の見解だった」と釈明したが、野党は反発し、国会は12日午前から全面的に審議が止まった。」(【森法相「逃げた」答弁、謝罪し撤回】 2020年3月13日夕刊) (2)【(考 次期政権の課題:6)改憲論議、首相主導が裏目 「9条に自衛隊を明記」、野党は反発】(2020年9月12日朝刊)(本文中には「露骨な首相主導に立憲民主党などが猛反発」との記述も) <毎日新聞> (3)「小泉氏は同日事実関係を認めたが「危機管理は万全だ」と繰り返し強調し野党は反発を強めた。」(【新型肺炎会議:新型肺炎会議 小泉氏、欠席を「反省」 野党追及に態度一変 森、萩生田両氏も地元会合】 2020年2月20日朝刊) (4)「秋葉氏は27日、首相官邸で記者団に「首相が自粛を要請したのは26日午後で、私のパーティーは夕方だった。物理的に中止は難しかった」と理解を求めているが、野党は反発している」「野党は28日、「国民には非常時だと言って協力を求めて、身内は何食わぬ顔でパーティーを開いている」(国民民主党の渡辺周衆院議員)などと反発している」(【新型肺炎:新型肺炎 「非常時」なのにパーティーとは 秋葉氏に野党反発 首相は更迭否定】 2020年2月29日朝刊) (5)「松川氏は予算委後、記者団に謝罪したが、野党は反発している。」(【新型肺炎:感染防止巡り自民がヤジ 「高齢者歩かない」 参院予算委】 2020年3月3日朝刊) (6)「与党は週内に内閣委で採決し、早期の衆院通過を目指すが、野党は反発している。」(【NEWSFLASH:検察庁法改正案 政府、必要性を強調】 2020年5月13日夕刊) (7)「13日の衆院内閣委員会で、武田良太行政改革担当相は黒川弘務東京高検検事長の定年延長とは無関係だと強調したが、野党は反発。「黒川氏の人事を後付けで正当化する法改正だ」と批判した。」(【焦点:検察幹部定年延長法案、野党退席 「黒川氏の人事正当化」】 2020年5月14日朝刊) (8)「過去最大の予備費にも野党は反発した」(【クローズアップ:新型コロナ 2次補正予算成立 「丸投げ」拭えぬまま】 2020年6月13日朝刊) (9)「閉会中審査への安倍晋三首相の出席にも前向きではなく、野党は反発を強めている。」(【臨時国会:臨時国会の早期召集、慎重姿勢 野党要求に自民・森山氏】2020年8月1日朝刊) (10)「開き直りとも取れる答弁により、野党は反発をさらに強めた。」(【「最長」のおわり:残された課題/2 不祥事の数々 人事握り、官僚「忖度」】 2020年8月31日朝刊) (11)「説明を尽くさない姿勢に対し、野党は反発を強めている。立憲民主党の枝野幸男代表は16日、記者団に「安倍政権以上に上から目線の政権になっている。学術会議そのものに対し、学問の世界に対して上から目線で、それに関して何も説明もしようとしないこと自体が上から目線だ」と批判した。」(【焦点:首相、学術会議梶田会長と会談 「丁寧な説明」ほど遠く わずか15分、両者かみ合わず】 2020年10月17日朝刊)  検索ワードを工夫すればもっと拾えるだろうが、このくらいにしておく。

野党側の論理を見えなくする「反発」という言葉

 「野党は反発」というこれらの記事を見渡して思うのは、「反発」という言葉が随分と空疎な言葉だということだ。どういう意味合いでそのようなリアクションをとったのかが示されていない。野党側の論理が見えてこないのだ。  「反発」という言葉を辞書で引くと、「他人の言動などを受け入れないで、強く否定すること。また、その気持ち」(デジタル大辞泉)、「はねかえすこと。はねかえること。外から加えられる力や他人の言動などに反抗して、うけつけないこと。負けずに反抗すること。また、そういう気持。」(日本国語大辞典)などと説明されている。  「受け入れない」「はねかえす」「うけつけない」――「ですが……」と意見された男性が、「なんだと!?」と机をバンと叩く。「少々お待ちください」と言われた女性が、「いつまで待たせるの!」と声をあらげる。そのような「感情的で否定的なリアクション」という意味合いが、「反発」という言葉には感じられる。
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「反発」という言葉を使わなくても記事はできる
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『日本を壊した安倍政権』

2020年8月、突如幕を下ろした安倍政権。
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