もう1つ、英語フォントと、日本語フォントについても押さえておきたい。英語フォントは、英数字と一部の記号を作ればよいので簡単に作ることができる。そのため、フォントの種類が非常に多い。対して日本語フォントは、文字数が非常に多いので、新しいフォントを作るのが難しい。
そのため、日本人向けのプログラミング用のフォントは、多くの場合、プログラミング用の英語フォントに、既存の日本語フォントを合体させて作る。また、その際に、一部の文字については、微調整をおこなうこともある。
日本語フォントとして用いられるものには、いくつか系統がある。まず、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)で配布され始め、現在は一般社団法人文字情報技術促進協議会に移管されている
IPAフォントだ。こちらは2007年に単体配布が始まった。
次は、森下浩司氏によってデザインされている
M+ FONTSだ。2002年に登場しており、こちらは派生フォントが非常に多い。プログラミング用のフォントの日本語部分に、よく採用されている。
最後は、Adobe が Google と共同開発したオープンソースのフォント
Source Han Sans(源ノ角ゴシック)だ。比較的新しく2014年に登場しており、こちらも派生フォントが多く、プログラミング用のフォントの日本語部分に、よく採用されている。
上述したように、プログラマーにとってフォントでこだわるべき点は多い。そうした、プログラマーの希望を満たすフォントは、日々開発されている。そうした中から、いくつかを紹介しよう。
まずは
Ricty 。その派生フォントの
Ricty Diminished。また、Ricty の特徴を継承して、判別性を高くした、
Myrica 。これらは、非常にオーソドックスで使いやすい。
次に、合字を利用して、プログラムでよく使う記号の組み合わせを強調した
FiraCode 。こちらは英数字のみだ。記号の見た目が変わるのが、便利だと思う人もいれば、混乱するという人もいるだろう。
さらに、
Source Han Code JP(源ノ角ゴシック Code)というフォントがある。こちらは、Source Han Sans がベースになったフォントで、美しい見た目だ。注意すべき点として、半角3文字と、全角2文字が同じ幅になっている。そのため、文字の横幅が、一般的な等幅フォントと違う。そこが駄目な人は合わないだろう。
最後に紹介するのは、2019年に公開された
白源だ。こちらは、
開発の経緯が面白い。
元々作者は、Ricty リスペクトだったそうだ。しかし、文字が細い、Windows 上の Electron 製のエディターでアンチエイリアスがうまく掛からないという問題があった。そうした問題を解決するために、白源というフォントを作ったそうだ。欲しい物がないので、自分で作る。プログラマーらしい発想だ。
こうした感じで、不満を持っている人の手によって、プログラミング用のフォントは、徐々に増えている。また今後も、新しいフォントが登場するだろう。
<文/柳井政和>