老母がコロナに。痛感する行政のダメさと医療機関の限界。そして無視される家族の「献身」

老母がコロナウイルスに感染

介護

画像はイメージ(adobe stock)

◆私的ルッキズム研究第12回  原稿が遅れてしまったのは理由があって、保健所や病院とすったもんだしていました。新型コロナウイルスです。今回はコロナウイルスについてのレポートです。  79歳の母が体調を崩し、身体がだるくてしょうがないということで、かかりつけの名大病院(名古屋大学医学部附属病院)で検査をしたところ、肺炎になっていることがわかりました。咳はなく血中酸素濃度も正常範囲内、しかしCTスキャンの画像はひどい肺炎でした。母はそのまま名大病院に入院し、PCR検査をおこなったところ、コロナ陽性という結果。

老老介護状態だった母の同居人、誰が面倒を見るのか?

 さて、ここからが大変でした。  母は父と別れてから、1歳年下の男性と同居生活をしていました。この78歳の同居男性にPCR検査を行ったところ、結果は陽性。介護していた母は入院してしまい、私も彼の世話をすることはできないので、どこかに入院することを希望したのですが、保健所では無症状陽性者の入院先はない、自宅待機してくれ、という方針。  彼は、認知症を患っているうえ、人工膀胱の袋を3日おきに交換しないといけない体なのですが、母が入院してしまったため、交換作業ができません。彼のかかりつけの医院にお願いしても、コロナ陽性者に対応できる体制にない、と断られます。  この人工膀胱の交換作業は、原則として医療従事者にしかできないのですが、名大病院をはじめどの医療機関をあたっても、コロナ陽性者への処置に難色を示すのです。保健所に相談しても、入院できる空き病床はないから自宅待機してもらうしかない、の一点張り。  さいわい、介護サービスの事業者が毎日弁当を宅配してくれることにはなったのですが、人工膀胱の交換については、介護事業者にはタッチできません。そこから保健所や医師会と押し問答をして、結局、春日井市民病院の緩和ケアセンターがストーマの交換作業を引き受けてくれたのですが、市民病院の方も感染爆発でてんやわんやですから、自宅への訪問看護まではやってくれません。  誰かが、彼を市民病院に送迎しなくてはなりません。では、誰がこのコロナ陽性者を病院に送迎するのか。結局、平日昼間に時間の融通の利く私が、彼を車に乗せて病院に送迎することになったわけです。  私は感染症に対応する訓練を受けていませんし、防護に必要な装備をわけてくれと要請しても、保健所は何もくれませんでした。しかたがないので、近所の薬局でアルコールスプレーを買い込んで、サージカルマスクを二重にかけて、自動車の窓を全開にして、市民病院までの道を走ったのです。  私は、母が入院した直後にPCR検査をうけて、陰性という結果を得ていたのですが、それで一安心ということにはなりませんでした。同居男性のコロナ陽性が判明して、その介護を引き受けさせられてから、自分自身も外出を控え、自宅に自主隔離する生活に入ったのです。
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カウントされない家族の献身
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