12月4日の党幹部記者会見(立花孝志のYouTubeチャンネルより)
迷走を続けるNHKから国民を守る党だが、とにかくニュースになりそうな話題の提供だけは怠らない。だが、一度言ったことをコロコロと前言撤回してしまうため、マスコミ側も翻弄されることを嫌い、とうとう何を発表しても記事にしてくれなくなってきた。今も変わらずに記事を書いてくれるのは、東スポぐらいである。
12月4日に行われた記者会見では、
河井克行被告の選挙区である広島3区に、前回の東京都議補選で「アベノマスク」をブラジャーにしたセクシーなポスターを採用して炎上した新藤加菜を擁立すると発表したが、国政政党のオフィシャルな発表にもかかわらず、ここまでのところ、
大手メディアは完全に無反応だ。せっかく注目度の高い選挙区に、これまで何度も「N国の美人広報官」として露出させてきた女性を擁立すると発表して、このザマである。
それ以外に、大阪5区に森友学園の元理事長である籠池泰典氏を擁立するなどと発表しているが、まったく話題にならず。それより気になるのは、衆院選に挑戦することを口実に5億円以上のお金を借りたのに、候補者の公募をするにあたり、300万円の供託金を自腹で用意してくれる医者か弁護士だと言っていることだ。自腹で用意しなければならないのなら、わざわ5億円以上の借入金を作る必要はなかったのではないだろうか。
11月26日にNHKから国民を守る党を離党した川西康司が、それからわずか1週間後の12月3日、山口県で土足で墓石の上に立ち、卒塔婆を振り回すなどの行為をしたとして礼拝所不敬容疑で逮捕された。(参照:
朝日新聞)
川西康司は2022年4月の松山市議選の公認候補となっており、N国党員の一人だった。迷惑系YouTuber・へずまりゅうのマネージャー(弟子)を自称しており、今年7月の東京都知事選では、へずまりゅうが立花孝志の応援に駆け付け、N国党の選挙カーの上でマイクを握るシーンも見られた。
1週間前に辞めたとはいえ、NHKから国民を守る党がYouTubeの再生回数を上げるために一線を越えてしまうような人に「公認」を与えていたことは、多くの人に知られるべきだろう。立花孝志というのは、こうした炎上芸でのし上がろうとするYouTuberたちにとって「憧れ」であり、炎上を逆手に取って国政政党となり、年間で1億6000万円ほどの政党交付金を国からもらえる身分になったことで、カリスマ的な存在となっている。
しかし、一時的にYouTuberのアクセス数を稼げても、その後に待っているのは「しっぺ返し」である。立花孝志自身、NHKから起こされた裁判では1100万円の慰謝料を請求され、さらには、不正競争防止法違反、威力業務妨害、脅迫罪で起訴され、刑事裁判を控える身分だ。川西康司は、へずまりゅうにノウハウを学び、N国公認という肩書きを得て、炎上系YouTuberとして名を上げようと必死だったのだが、結局、全国にその名が知られたのはYouTuberとしてではなく、犯罪者としてである。
しかし、NHKから国民を守る党には、今も月に1000件近い電話相談が寄せられているという。NHKから「重要」と書かれた書類が来たり、簡易書留が届いたりした時に、まずは同党のコールセンターに電話をかける人が少なくないからだ。相談件数を見る限り、昨年と比べて半分くらいになっている印象だが、それでもまずはN国党コールセンターに電話をかけてしまう人はそれなりにいるのだ。
しかし、NHKから国民を守る党のコールセンターに電話をかけたところで、問題が解決することはないのは言うまでもない。
<取材・文/石渡智大>
普段は選挙ウォッチャーちだいとして日本中の選挙を追いかけ、取材。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「
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