先ほど紹介した石垣議員の質疑によって法改正の根拠は大きく揺らいだ。その後、同日に行われた反対討論でも石垣議員及び共産党・紙智子議員の2名は種苗法改正の矛盾や危険性を訴えた。
以下、反対討論の発言からいくつか抜粋する。
石垣のりこ議員:「今国会の委員会での多くの質疑を通じて明らかになったことは、農家の自家増殖という事実と種苗の海外流出および新品種開発の開発数の減少という事実に明確な因果関係が確認できなかったということです。そうである以上、それを根拠に法改正を行い、現行法で保障されている農家の権利を制限することに何の正当性もありません。」
「残念ながら世界の種苗市場は合併買収を繰り返して誕生したグローバル企業による寡占化が着々と進んでいます。我が国の主要作物は射程外であると考えるのはあまりにも甘いと言わざるを得ません。圧倒的な資金力でゲノム編集など最先端の技術を使い、これまでの常識では考えられないような品種を次々と生み出す巨大なグローバル企業によって、気がつけば食の根幹である米・麦大・豆などの種苗も独占されていた、と。そのようなことがあっては本当に後の祭りです。後悔しきれません。日本の農業を守るには種子を守るための予算措置を保障する法律、種子法の適正な復活、さらに主要作物だけではなく野菜などの在来種も含めた食料としての作物を保護し活用していくことが必要と考えます。」
紙智子議員:「生産者の自家増殖の事実上の禁止は成長戦略、輸出戦略を進めるためです。農林水産省の知財課長は検証・評価・企画委員会 産業財産権分野会合で『自家増殖が認められている分野で民間の参入が阻害されている』と言っています。ここに本当の狙いがあるのです。改正案には育成者権の乱用を防止する規定はありません。育成者権のみが強化され種苗会社の力が強くなれば企業による種苗の支配が強まることになります。」
「日本の育種力の発展は育成者と生産者と試験場の共助です。種苗の生みの親は試験場、育ての親が生産者だと言われています。自家採種の事実上の禁止は農業者を種苗の単なる利用者、消費者にするもので農業の多様性も生産者の創造性も奪うことになりかねません。」
*石垣議員と紙議員の反対討論、国民民主・舟山康江議員の賛成討論、採決に至る約11分間の全ての発言は筆者のnote「
【全文 文字起こし】 参議院農林水産委員会2020年12月1日 種苗法改正案 討論・採決」で公開中
だが、こうした反対討論の後、参議院 農林水産委員会の採決でこの種苗法改正案は可決された。
立憲民主、共産、無所属の議員らは反対したものの、過半数を占める
自民、公明、維新、国民民主の議員が賛成したからだ。そして、翌2日に参議院本会議でも同様に
自民、公明、維新、国民民主の議員らの賛成によって法案は可決・成立。
法改正の根拠が曖昧なまま、過半数を占める議員の多数決によって悪法が可決され、大手メディアは肯定的な報道を垂れ流すという安倍政権時代から続く地獄絵図がまたも繰り返されたのである。
<文・図版作成/犬飼淳>
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いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身の
noteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。
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