北海道寿都町の「核のゴミ」最終処分場受け入れの是非を問う住民投票否決に、独裁的町長リコールの動き

文献調査応募の是非を問う住民投票条例案を、寿都町議会が否決

町議会の議決なしに独断で文献調査に応募した片岡春雄・寿都町長。報道関係者の問い掛けには一言も発しなかった

町議会の議決なしに独断で文献調査に応募した片岡春雄・寿都町長。報道関係者の問い掛けには一言も発しなかった

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定プロセスの文献調査に応募した北海道寿都(すっつ)町で11月13日、応募の是非を問う住民投票条例案が町議会で否決された。  これによって、住民投票は行われないことになった。この臨時町議会を傍聴していた澤山保太郎・元高知県東洋町長は、「文献調査応募は法律違反」と断言する。 「地方自治法第138条の2には『地方公共団体の執行機関は、議会の議決と法令などに基づいて事務を執行する義務がある』と定められていますが、今回の文献調査の応募は、町議会の議決も根拠となる法令もない。住民訴訟をすれば、勝つ可能性は高い。国会や道議会で追及されてもおかしくないでしょう」  2007年1月に田嶋裕起・東洋町長(当時)も、片岡春雄・寿都町長と同様に、最終処分場の文献調査に応募した。これに対して田嶋町長のリコール運動が起き、出直し選挙に打って出たものの、澤山氏に敗れて計画は撤回されたのだ。 「民意を無視する姿勢は、田嶋元町長も片岡町長も同じ。当時の私の経験が活きればと思って、北海道と高知を行き来しています」(澤山氏)

応募を撤回させた澤山保太郎・元東洋町長の「寿都町通い」

核のゴミ最終処分場選定の文献調査に応募した町長を出直し選挙で破って計画を撤回した澤山保太郎・元東洋町長

核のゴミ最終処分場選定の文献調査に応募した町長を出直し選挙で破って計画を撤回した澤山保太郎・元東洋町長

 澤山氏の「寿都町通い」が始まったのは、寿都町が文献調査への応募を検討すると報じられた8月13日の11日後、8月24日から。「核廃棄物の地層処分に反対します」と銘打った文献調査撤回を求める申入書を町役場に提出して、片岡町長とも面談した。 「『貧しい町でも、核交付金(原発マネー)に頼らずに財政健全化を達成することは可能』という私の経験談を聞いてはくれましたが、文献調査応募の意思は固いようでした」と澤山氏は振り返る。  その後、10月9日に片岡町長は文献調査に応募した。そうした事態を想定していた澤山氏は、財政再建の実績や核廃棄物地層処分の危険性などをまとめたチラシを作成し、寿都町の全戸に配布。臨時議会初日の11月11日には「地方自治法違反ではないか」などの質問を並べた公開質問状を出し、町内で街頭演説をするなど精力的な活動を続けていたのだ。
小泉純一郎元首相の講演会を主催、住民投票の署名集めをした「町民の会」の吉野寿彦・共同代表(水産加工会社社長)

小泉純一郎元首相の講演会を主催、住民投票の署名集めをした「町民の会」の吉野寿彦・共同代表(水産加工会社社長)

「片岡町長を辞めさせて第二の東洋町のようにしよう」という気運も高まりつつある。小泉純一郎元首相の寿都講演を主催した「子どもたちに核のゴミのない寿都を! 町民の会」の吉野寿彦・共同代表(水産加工会社社長)は13日の否決後、囲み取材でこう語った。 「議会の中も腐っていたなという思いです。もう町長に訴えたいことはない。訴えても聞く耳を持たないと思うし、まともではない。今後は、リコールに向けて調整していこうと思っています」  筆者記事(「小泉純一郎元首相、『核のゴミ』最終処分場建設の文献調査を受け入れた町で『日本では不可能』と講演」)で紹介した通り、「肌感覚で町民の賛成は分かる」と豪語する片岡町長の暴走を止めるべく「町民の会」は住民投票に必要な署名を集めたが、その道が断たれたのを受けて第二段階のリコールや来年秋の町長選に向けて動くことを示唆したのだ。
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独断で応募したことを認めた片岡町長
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仮面 虚飾の女帝・小池百合子

都民のためでも、国民のためでもない、すべては「自分ファースト」だ