サラリーマンながら、副業で持続化給付金の申請代行に手を出した藤木さん。一人で1000万円以上の副収入を得ることに成功した
不正受給者を連れて税務署を訪れると、「大の大人が2時間近く説教されて、泣きじゃくる人もいる」という。そんな彼らをそそのかして甘い蜜を吸ってきたのが申請代行業者だ。サラリーマンの傍ら約100件の申請代行を行い、1000万円以上の副収入を得たという藤木さん(仮名・30代)が話す。
「自分の主な客はホストやキャッチ、キャバ嬢、パパ活女子など夜の仕事をしている人たち。自分でキャバに行って捕まえた“客”もいるけど、半分以上は知人の紹介。間に複数の紹介者を挟むほどマージンを抜かれるので、自分が得る報酬は10万~30万円程度です」
不正受給には加担していないと話すが、その手口はきわどい。基本的に申請希望者とは会わず、電話越しのやり取りのみ。口頭で知らされた昨年の収入で確定申告を行い、受領印をもらった申告書類をデータ送信した後、本人に申請手続きを行わせるという。
「すべての業務を代行してしまうと不正が疑われやすい。実際、同じIPアドレスから複数の申請が行われていることがわかると調査されるリスクがあるので、多くの代行業者がVPN(仮想専用線)を利用して申請代行業務を行っていましたが、9月以降VPN経由での申請フォームへのアクセスが遮断されました。最後の申請作業は電話で指示を出しながら本人にやらせるほうが確実なんです」
この申請代行ビジネスには収入以外のメリットもあるという。
「出会い喫茶に行って一発ヤったあとに『給付金もらった?』と話をすれば5人に1人は食いついてくる。パパ活収入を申告し忘れていた昨年の収入として計上すれば、パパ活女子も持続化給付金の受給対象になるので。オンナとヤれてカネももらえるなんて最高です」
当然、申請者が昨年の収入を偽っていたら不正受給の片棒を担いだ格好になるが、「やり取りは自動的にメッセージが消える『Signal』を使っているので不正の証拠となるものはない」という。最悪疑われても、「申請者にダマされた」と言い逃れする算段とか。
完全に不正を認識しながら申請代行を行う業者もある。5~7月の3か月で1億円以上を荒稼ぎしてタイに逃亡した市川さん(仮名・30代)が、その全貌を明かす。
「『#副業』などのハッシュタグをつけて、『10万円追加給付』とSNSに書き込めばいくらでも情弱が集まる。あとはテレグラムに誘導して、免許証のコピーと預金通帳の写しを送ってもらって、申請を代行するだけ。昨年の収入確認? そんなのしませんよ。年収130万円と書き込んである確定申告書類の名前と住所を書き換えるだけで十分。税務署の受領印のある申告書の写しと免許証、銀行口座の入金記録、適当な台帳さえあれば給付金の申請ができるんですから。それで100万円が下りたら、90万円を“税理士”と偽った私の口座に振り込んでもらうわけです。もともと『10万円の追加給付』を謳って集めたカモなんで、90万円の手数料を取られることに疑問を持たない人がほとんど」
異常な報酬の高さだが、市川さんは7月にきっかり手を引いた。
「税務署のチェックが厳しくなったんです。以前はすぐに受領印を押してもらえたのに、『収入の記載だけで経費の記載がないがいいのか?』などと確認する税務署が増えた。話すほど顔を覚えられ、身バレのリスクが高まる。7月後半には不正受給で初の摘発事例が出たので、やめました」