自主制作CDデビュー後も、先生の“お言葉”を信じて、高額の支払いを続ける人もいる。栃木県在住の秋田京子さん(仮名・68歳)の例だ。
「同じように自主制作デビューした歌手を集めた“お披露目会”が2~3か月に一度あります。
一枚3000円程度のチケットを30~40枚分負担させられ、売り上げはすべて“先生”の元へ。また『
今日来た客のなかから舞台で歌いたいヤツも集めろ。一曲5000円で』と命じて、歌唱後の観客を先生がスカウトしていくのが恒例。まあ、これも修業のひとつです」
そして、かつて高齢者からの搾取として話題になった、PCデポと似たようなこともある。
「先生の友人が行う“YouTube番組”に出演できると聞き、私のほかにも高齢者の歌手が一堂に集められました。参加費は20分のトークに4曲歌って一人1万円。ただ番組は据え置きのスマートフォン1台で撮影されていて、これが1か月1~2回は徴収されます。時代に乗り遅れないように私たちも必死です!」
その番組を確認したが、チャンネル登録者数は10人……。再生回数は100回未満で、編集も特にされていなかった。秋田さんは他にも支払いがあると明かす。
「インターネットのラジオ番組を“枠買い”しています。朝7時頃の放送の15分番組で、支払いは一回MCするのに3万円。月換算で12万円ですね。たまに、別の人のゲスト出演でお呼ばれされたときは
出演料として1万5000円を払うこともあります」
《デビュー後も続く搾取の構造》
▼インターネットラジオ番組配信 月12万円
▼YouTube登録料 月1万~2万円
▼カラオケ雑誌に登場 一回3万円
▼楽曲継続登録料 年間2万円
▼チケットノルマ 月2万~3万円
(※料金はすべて搾取側が“上乗せ”したもの)
月に合計 約20万円
ちなみに某インターネットラジオ局では、番組の枠買いを3か月10万1000円で持てるとホームページに記載されていた。そこで秋田さんに理不尽な出演料を請求されている可能性を指摘すると、あろうことかこう否定したのだ。
「でも、周りの皆さんも同様に払っていて、本当に売れた人もいるんですよ。貯金を取り崩していますが、ブレイクしたらすぐに元は取れますからね」
無知な高齢者を“洗脳”して搾取し続ける悪徳業者たち。読者諸兄の親の老後資金が狙われていないか、一度チェックしたほうがいいかもしれない。
【歌手・岡 恵子氏】
’11年「愛の行方」でデビュー。自身もかつて自主制作の搾取を経験。現在はガッツ石松氏が代表の「ガッツ・エンタープライズ」所属。
<取材・文/中山美里(オフィスキング) 加藤浩之(本誌)>