若者のほぼ2人に1人が失業者になるスペイン。その要因に見る日本との近似性

95%が従業員が10人以下の小企業

 ④で指摘しているように、スペイン企業のほとんどが小企業である。小企業であるが故に財務的にも脆い。仮に、新規採用をするとなっても一人とか多くて二人といったところだ。  スペインに存在している企業数はおよそ290万社。その内の95%が従業員が10人以下の小企業である。  今回のコロナパンデミックで脆に影響を受けたのはこれらの小規模な企業である。パンデミックで封鎖が実施されて売上がなくなると経営を続けられなくなるという企業だ。  コロナパンデミックでこれまでおよそ大企業を含め20万社が市場から姿を消した。これも若者を含めた被雇用者が職場を失った要因になっている。  また、スペインは起業精神に欠ける面もある。OECDの中でスペインの下に来るのはブルガリアだけである。それだけ企業を誕生させる意欲が少ないということだ。但し、問題もある。スペインでは企業を築くのに行政上の手続きや資金面での融通が企業を創設するのに容易でない面もある。  スペインで雇用を創出するには企業数を増やすことしかない。その為にも、現在の観光業に依存した経済だけでは発展に限りがある。残念ながら新しい国家プロジェクトがスペインには存在しない。ということで、今後も失業問題からスペインが解放されることはないであろう。  もちろん、これはスペインに限った話ではない。イノベーション精神に欠けた企業・社会の構造。新人育成をする余裕もなくなり、正規雇用を嫌うばかり。最後の頼みの綱は「インバウンド」……。日本も決して「他人事」ではないのである。 <文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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