若者のほぼ2人に1人が失業者になるスペイン。その要因に見る日本との近似性

長期雇用を嫌う経営者たち

 次に②について述べると、スペインの企業経営者の間で一般に短期で雇用するのを好む傾向がある。ひどい場合は1週間単位の雇用契約というのもある。理由は被雇用者の社会保障費など、人を雇うことによって発生する会社が負担する経費を最小限にとどめたいという意向を経営者がもっているからである。ひとり雇うと会社側が負担する費用は支給する給与のおよそ3割だ。また、長期の雇用を経営者が嫌うのは、会社が不況になって被雇用者を解雇したい場合に解雇保補償金の負担をできるだけ少なくしたいからである。被雇用者が会社で長く勤務すればするほど解雇する場合の被雇用者への解雇保証金の負担が大きくなる。  だから経営者の中には会社負担を軽減させるために自営業者を雇う傾向にある。自営業者というのは本人が社会保障費や自営業者が負担する税金を払っているということ。会社側で彼らを雇えば会社が負担する費用はなくなる。スペインで企業の営業マンの多くは自営業者である。だから会社側は彼らの売り上げに対して一定比率でコミッションを支払うだけでよい。  これで最近問題になったのは料理された食事を宅配する人と料理を作る業者との関係である。料理を作る業者は宅配サービスをする人を自営業者として契約していた。しかし、この場合お客から注文を取るのは料理を作る業者で宅配する人は飽くまで作られた料理を宅配するだけ。それは経営者と被雇用者という関係であって、宅配する人を自営業者とみなすことはできないという判決がつい最近下されたのである。採決通りになると、雇用者が被雇用者の社会保障費などを今後負担する必要が出て来る。雇用側がこの判決を不服として上訴するかもしれない。

大卒でも職にあぶれる社会

 そして、③の大卒でも職場長い点について見ていこう。  スペインには公立と私立の大学合わせて82校ある。日本の大学のように就職シーズンになると会社側で求人行広告をするといったようなことはない。また、企業が大卒で唯一関心のあるのは専門分野で優秀な成績を収めた学生かアイディアを持っている学生だけである。というのは企業は大卒者に即戦力を求めるからである。雇用して職場で初歩から色々を教えて行くというような余裕は企業には経済的にも時間的にもない。また卒業してすぐに働ける可能性があるのは父親の会社に勤務するとかいった縁故がある学生である。  高卒などになると職場を見つけるのはかなり難しくなる。スペインで25歳までの若者は650万人いるとされている。ということで、その半分の300万人の若者に職場がないということである。勿論、その中には大卒も多くいる。
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コロナ禍で多くの「雇用先」が消えた
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