パワハラにウソの求人広告……ブラック企業から逃げずに戦った人たち、それぞれの戦う理由
2020.10.22
『アリ地獄天国』が公開されます。この映画は、大手引越し業者で働く主人公が、会社から不当な労働条件を強いられながら、労働組合に参加して戦い、自らの権利を勝ち取っていくドキュメンタリー。
貧困ジャーナリズム賞を受賞し、海外でも米ピッツバーグ大学日本ドキュメンタリー映画賞のグランプリを受賞するなど、国内外から注目を集めています。公開に先立ち、映画に登場する労働組合に加入した、ブラック企業勤務の男性2名に映画について、自身の闘争について語ってもらいました。
映画『アリ地獄天国』で取り上げられたのは、引越し大手とされる「とある引越会社」でした。名前の知られた大手企業がこんなにもブラックな労働体制だったことに、ニュースになった当時、驚かされた方も多いのではないでしょうか。
しかし、それは氷山の一角のようで、座談会に臨席した2名もかなり知名度のある企業と戦っています。本業はタクシー運転手だという鈴木さんは次のように話します。
「コロナでタクシーの収入が減少するだろうと思い、副業でバイク便の仕事を探したんです。そして見つけたのが『F』という会社でした」
「F」は、バイク便の比較サイトにも他社と並んで登場し、街中を走る同社のバイクもよく見かける有名企業です。
また、この仕事が掲載されていたのも、大手求人情報誌のタウンワークでした。しかし鈴木さんは求人広告と実情の隔たりに驚いたと言います。
「広告には『日収2万円以上可』とあって、その待遇面にも惹かれました。面接の時にも、具体的にいくら稼げるのかを尋ねたんですが『稼げる人は1万円以上持って帰るよ』という答えが返ってきた記憶があります。でも、実際は全然違っていて、報酬が千円いかない日もザラだったんです」
また、大手総合免税店に勤務する30代男性は、こう語ります。
「前職で労務を中心に扱う人事を担当していたんですが、この会社に入った時『上場企業ではあり得ない労働体制』という印象を持ちましたね。パワハラは横行しているし、サービス残業は当たり前。今年9月には、役員ではない大勢の社員の基本給が一律で4万円切り下げられることになったんです。本当なら同意が必要なことなんですが、同意なんてとらずに」
映画の中でも「とある引越会社」が管理職社員に月392時間の労働をさせたり、部下への暴力が行われていることが語られています。大手といえど不当な労働条件を強いる会社はいくつもあるのです。
10月24日から渋谷ユーロスペースにて、映画バイク便、求人広告通りには稼げず……
パワハラとサービス残業が横行する職場
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