コロナ禍の今、あえて映画館でフィルム上映することの意味とは。七里圭監督インタビュー

「デジタル化で人間のようなものにされてしまう」

――最後に特集上映を行うにあたってのメッセージをお願いします。 七里:映画の上映は、実はライブのように一回性のあるものだと思っています。映画館にわざわざ足を運び、その場限りの見知らぬ人々と一緒に、暗闇に身を沈めてスクリーンに没頭する、その時々の体験です。フィルム上映が当たり前だった20年前に『のんきな姉さん』を見た人も、デジタルシネマが普通になった今の時代にもう一度フィルムで見たら、また違う印象を持つのではないでしょうか。  21世紀はインターネットの時代と言われていますが、その特質は何でも情報(=データ)にして標準化と均質化を加速させることです。 2020年のコロナ禍によって、映画も配信で見るようになりましたが、会議や授業などもオンラインが推奨され、盛んになりましたよね。  私はずいぶん前から、デジタル化によって、映画が「映画のようなもの」にすり替えられたのではないかと考えているのですが、オンラインも「場」のすり替えのような気がしています。そうやって、リアルな場の代わりに与えられた「場のようなもの」に慣らされ順応していくうちに、人間の「生」も侵食されていき、「人間のようなもの」にされてしまうのではないでしょうか。  そうした時代にあって、映画館は「映画」を単なる情報として受け取るのではなく、それぞれに固有の体験をする大切な場だと思っています。そういう意味でも、ぜひ、下高井戸シネマでの特集上映に足を運んでいただき、映画館でしかできない体験をして欲しいと思っています。 <取材・文/熊野雅恵> <撮影/日景明夫>
くまのまさえ ライター、クリエイターズサポート行政書士法務事務所・代表行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、自主映画の宣伝や書籍の企画にも関わる。
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●下高井戸シネマ 七里圭監督特集 のんきな〈七里〉圭さん
10月24日(土)から30日(金)まで
劇場HP
http://www.shimotakaidocinema.com/schedule/tokusyu/kei.html
公式HP
http://keishichiri.com/jp/events/nonkikei/
予告編
https://youtu.be/Xrx5K4zTVWM

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