リニア実験車両火災事故は、「火花」では済まされない! 5000℃以上の超高温電流が従業員を焼いていた

「アーク放電現象」が発生したと都留市役所は回答

都留市法制広報担当からの回答文書

都留市法制広報担当からの回答文書。「アーク放電」であったことが明記されている

 回答文書にはこう書かれていた(概要)。 「火災の原因は、ガスタービン発電機の作業中、作業用断路器投入後、加圧された正負極ナイフスイッチにディスコン棒先端部分が接触し短絡したことにより、アーク放電現象が発生し、出火したものと判定する」  専門用語ばかりで判読不能だ。そこで、読者のためにもまず、単語の解説をしてみたい。 ★断路器  電流が流れていない電路を開閉するための装置。修理や点検時に特定の機器を電気回路から切り離すためのスイッチでいわゆるブレーカー(遮断機)とは異なる。ディスコンとも呼ばれる。 ★正負極ナイフスイッチ  断路器に電流が流れないように、レバーで上下させて電気のオン・オフを切り替えるスイッチ。 ★ディスコン棒  断路器の操作をする棒。絶縁性能の高い塩化ビニルやFRPで作られている。先端の「金属製」フックを断路器レバーに引っ掛けて、スイッチのオン・オフを行う。 ★短絡  いわゆる電気の「ショート」。ショートすると、過電流が流れて火花が飛び、それが継続状態になると発火する。   ★アーク放電  狭い通路に電流が集中し、電子と中性粒子、イオンとの衝突、中性粒子間の頻繁な衝突によって、電気エネルギーが熱エネルギー・光エネルギーに変化。弧状に発生する電流の温度は5000°C以上の高温になる。簡単に言えば、電線ではなく、空気中を走る高電流のことだ。

太陽の表面温度のような超高温の電流が従業員たちを焼いた!?

裏側から撮影した車両基地

裏側から撮影した車両基地

 都留市の開示文書は判りにくいが、以下のように解釈できる。  たとえば、車のバッテリーにはプラス極とマイナス極がある。マイナス極から出た電子は、車の中さまざまな回路を巡って、最終的にはバッテリーのプラス極に戻ってくる。これが「電流」と呼ばれる。  もしこのとき、金属製のスパナなどの工具をたまたま直接プラス極とマイナス極とに同時に接触させてしまうと、電子は車の中を通らずに、マイナス極から突然プラス極に移動する。これを「ショート=短絡」という。このときに火花が出る。  今回の事故は、従業員が断路器をディスコン棒でオンにした。おそらくその後、ディスコン棒の先端が通電しているナイフスイッチに触れてしまい、アーク放電してしまったと推測される。  もちろん、火災発生時の映像があるわけではない。そもそもアーク放電とはどういう現象なのかを確認するためにインターネットで検索をかけてみると、複数の動画を閲覧できた。  その現象の激しさに筆者はうなった。アーク放電の温度は太陽の表面温度(約6000℃)とほぼ同じか、それ以上にもなる。そんな超高温の電流が従業員たちを焼いたのだ。
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JR東海からは事故についての説明なし
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