若手起業家やスタートアップを支える夢のEU補助金。影には悪夢を見る下請け企業も
アベノミクスが目指したトリクルダウンの大失敗が影を落とすなか、若手経営者の創業、中小企業の支援はこれまで急務となっている。経済活性化にはイノベーションが欠かせないが、それを後押しするためにも新たな施策が求められるところだ。
そんななか、ここ日本でもモデルケースのひとつとなっているのが、EUの支援プログラム「Horizon2020」だ。2014年にスタートしたこのプログラムは、今年までに800億ユーロ(約9兆8400億円)という莫大な予算が投じられると発表されている。(参照:「最強のスタートアップ補助金」実現に向けて)
注目したいのは、このプログラム内にある「SME Instrument」というもの。これはスタートアップなどの中小企業を対象としており、同プログラムは下記3つの段階にわけられている。
・フェーズ1:実現可能性の評価
補助率:100%、事業費:5万ユーロ(一括前払い)、事業期間:通常6か月、書類審査のみ
・ フェーズ2:イノべーション創出のための取り組み
補助率:70%、事業費:50万~250万ユーロ(最大50%前払い)、事業期間:通常24か月、書類と面談による審査
・フェーズ3:商業的利用の促進
これに加えて、EU内の各国でもさまざまなプログラムが組まれており、30代半ばの筆者が滞在しているポーランドでも、周りに多くの若手経営者が誕生している。例えば、造園業を営んでいるGさん(男性・32歳)。
「それまで特に起業してみようというアイデアは持っていなかったのですが、人の下で働くのではなく、自分で会社を経営できるのはやはり魅力的ですよね。私がアプライしたプログラムは3年以上の黒字経営が条件でしたが、無事その期間も乗り越えたので、補助金を返済する必要もなく、順調に仕事を続けています。大きな会社ではないですが、こういったプログラムがなかったら、今ごろ全然違う道を歩んでいたでしょうね」
前述の「SME Instrument」では支出管理や不正防止のため、レポートの提出やモニタリングも行われているが、手間や経費を抑えるため、肉を切らせて骨を断つ柔軟な対応が取られているという。要は、黒字経営が続いていたり、成果が出ていれば、すべての企業が横一列で厳密に監視されるわけではないということだ。
事業費一括前払いのプランも
「監視」はケース・バイ・ケースで
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