地方創生、国土強靭化、不妊治療・少子化はどうなる?
地方創生も、菅内閣の注力課題のひとつだ。ふるさと納税や「Go To トラベル」関連に加え、「在宅勤務拡大を機に、オフィスの地方分散化にも取り組むのではないか」と窪田氏は分析する。
さらに、財政政策による「国土強靭化」も期待のテーマだ。
「アベノミクスでは防災に関する政策の多くがやり残したまま。現状はコロナ禍で工事が遅れていますが、自然災害の脅威が増していることを考えても、いずれ力を入れていくはず」(窪田氏)
菅新首相は不妊治療の保険適用化についても言及しており、少子高齢化関連にも妙味はありそうだ。
現状はコロナ禍で景気は低迷しているが、株式投資はどのようなスタンスで臨むべきか。窪田氏は「こうした時期は買い場」と話す。
「当たり前の話ですが、景気は循環することを忘れてはいけません。100年に一度の危機といわれた’08年リーマンショックに襲われても翌年4月には世界経済が回復に向かった。現在、コロナ禍によって実体経済は大きな打撃を受けていますが、私は’21年から景気は回復期に入ると予想します。ここで菅内閣が強いリーダーシップを発揮できれば、株式市場の力強い上昇を後押しするはずです」
一方、藤本氏も「どんなに景気が悪くても、世界的な金融緩和でマネーは株に向かうしかない」と指摘する。
「コロナ禍による景気後退の傷は、バブルでしか癒やされません。長期政権が視野に入れば、日経平均株価は2万8000円もあり得る」
▼携帯料金引き下げ
菅新内閣で総務相に任命された武田良太氏は「1割程度では改革にならない」と早速発言するなど、携帯大手に対する値下げ圧力は強まりそうだ。「NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社にはネガティブですが、格安スマホの事業者であるMVNOには大恩恵。注目は日本通信(9424)です」(藤本氏)。また携帯料金の値下げは低所得者層、若年層の消費を喚起するのに有利な施策という。
▼国土強靭化
公共事業による財政出動はアベノミクスの矢の一つ。防災・減災の強化とともに老朽化したインフラの補修・整備も急がれており、菅政権でも踏襲するとみられる。「アベノミクス初期には建設会社が人気化しましたが、補修箇所が見えるスケルトン防災塗装技術を持つエムビーエス(1401)や、ドローンによるインフラ点検ビジネスを展開する自律制御システム研究所(6232)などにも注目」(藤本氏)。
▼地方創生
「総裁選では菅氏の地方票は石破茂氏の倍以上。在宅ワークも定着しつつある今、秋田出身の菅氏のもとで地方創生はさらに脚光を浴びる」(窪田氏)。地方の優良企業を中心にM&Aが進むと藤本氏は予想し、「買収に積極的なヨシムラフードホールディングス(2884)や前田工繊(7821)に注目。地方企業と首都圏の人材の副業マッチングビジネスを手がけるみらいワークス(6563)にも期待」と話す。
▼不妊治療・少子化
菅内閣の初めての閣議で定めた基本方針では、「喫緊の課題である少子化に対処し不妊治療への保険適用を実現する。保育サービスの拡充で待機児童問題を終わらせる」と言及しており、少子化対策は引き続き“国策”だ。「婚外子への抵抗が強い日本では、少子化対策は非婚対策でもあります。婚活サービスのIBJ(6071)、パートナーエージェント(6181)が有望でしょう」(藤本氏)。
▼DX
’21年秋までに行政のデジタル化を推進する「デジタル庁」新設を発表。窪田氏は「コロナ禍で露呈した非効率な縦割り行政の打破に期待が高まっている」と話す。注目銘柄は多岐にわたるが、藤本氏は「AIソリューションのヘッドウォータース(4011)をはじめ数多くの有力IT企業に出資するベクトル(6058)、企業向けデジタルマーケティングのオーケストラホールディングス(6533)が面白い」と分析。
【窪田真之氏】
楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。住友銀行、住銀バンカース投資顧問、大和住銀投信投資顧問を経て’14年より現職。日本株ファンドマネジャー歴25年のスペシャリストとして活躍する。
【藤本誠之氏】
マーケットアナリスト。日興證券、マネックス証券、SBI証券などを経て、現在は財産ネットの企業調査部長。「相場の福の神」と呼ばれ、テレビ、ラジオなどメディア出演多数。
<取材・文/森田悦子 図版/ミューズグラフィック>
※週刊SPA!9月29日発売号より